プレーンスケープ トーメント 非公式小説

別れ

前章 | 目次 | 原文


 振り返り、モーテの名前を呼んだ。彼は私のほうに漂ってきた。

「あ~、大将、そのどうしたんだ?」

 私は……今何か別のものになった。時間がない。すぐに時と運命が、私に追いつくだろう。モーテ、望むなら、お前をシギルに送り返そう。

「な—? オレを送り返す? はどうなんだ? おいおい、大将、オレは臆病者かもしれないけど、アンタをここに残してくわけないだろ」

 私が定命者だった時、そして分かたれた時、犯された罪が数多くある。罪には……代償がある。私がすぐに行くことになる場所に、お前が行くことはない。

「いや、まあ、どこにだって行けるさ、大将、アンタが望むならね—だって、オレたちはこれまで—」

 今回は違う。おそらくいつの日にか、別の次元界で、また会える。しかし、今ではない。

 モーテはしばらく私を見つめ、そしてため息をついた。

「そんなに目を潤ませるなよ。でも、まあ、楽しかったぜ、大将」

 さようなら、モーテ。

 私はアンナのほうを向いた。

 アンナ。大丈夫か?

 私が話しかけると、彼女の目が見開いた。

「ど—どうしたの? その声—反響してるみたいよ」

 変わったんだ。何か別のものになった。そして、あまりここに留まることはできない。望むなら、お前をシギルに送り返そう。

「な—」

 アンナは口を開き、固まった。

「あはどこに行くのよ?」

 私が定命者だった時、そして分かたれた時、犯された罪が数多くある。罪には……代償がある。私のような者に運命づけられた場所が、下方次元界にある。これは……罰のようなものだ。

「でも私は……私は行って欲しくない」

 アンナ、お前が私のためにどれほど犠牲になろうとしていたか、忘れることはない。

 アンナはうなずいた。そして何かを言おうとしたが、口を閉じた—声にならなかった気持ちが、彼女の心の中に残った。

 お前の心を知るのに、言葉は必要ない。アンナ、さようなら。

 私はダッコンのほうを向いた。

 シュラクトロールのダッコン、カラチの刀の最後の担い手よ。

 私の言葉を聞いて、ダッコンがゆっくりとうなずいた。

「その声……お主はついに、自らを識ったのか?」

 ああ。それは……困難なことで、多くの生涯が必要だった。私が再び自分を知るために、多くの者たちが苦しんだ。

「自らを識るのは、困難な道だ」

 それを知り、すぐにどこに縛られることになるのかを知った。こうしているあいだにも時と運命が追いついてきて、ここに長く留まることはできない。ダッコン、望むなら、お前をシギルに送り返そう。

 ダッコンはしばらく沈黙した。次の彼の言葉は、つながりを断ち切るかのように鋭かった。

「かつて、お主に借りがあったことを識れ。お主が儂の命を救い、その借りを返すために従っていたことを識れ。儂はお主の生のため、自らの生を支払った。借りは返された」

 そうだな、ダッコン。私たちの死は一つだった。お前は自由に、この場所を離れるんだ。

 私は優しいタナーリに顔を向けた。

 フォール゠フロム゠グレイス。

 彼女は顔を上げてしばらく目を合わせ、そして微笑んだ—しかしそれはかすかな笑みで、何よりも悲しさを帯びていた。

「ついに自分自身を見つけられたのですね?」

 ああ。代償は……大きかった。私と、他の者たちの、数多くの生涯が犠牲になった。

「そのような代償が、銅貨で測られることは、めったにありませんものね」

 フォール゠フロム゠グレイスが私の顔を見つめた。

「あなたは、まだ—」

 私はまだ、お前が知る者だ—しかし考え方は……変わった。心配しなくても、お前を忘れてはいない。

 フォール゠フロム゠グレイスは再び微笑んだ。同じ悲しい微笑だ。

「いいえ、そのことを恐れているわけではありません」

 ここにはあまり留まれない。処罰が私を呼んでいる。運命と時がすぐに追いついてくるだろう。望むなら、お前をシギルに送り返そう。

「それはわたくしの望みではありません」

 フォール゠フロム゠グレイスは手を伸ばし、私の腕に軽く触れた。わずかなひりひりする感覚があり、手が離れた。

「またあなたを見つけます、下方次元界のどこにいるとしても—あなたがわたくしを見つけることができるのと、同じように」

 長い時がかかるだろう。私が縛られる場所では、時の単位は年ではない。そして私が犯した罪は、どんな鳥籠とりかごよりも強い。

「どんな鳥籠とりかごも、わたくしたちを引き離すことはできません。どんな次元界も、わたくしたちを分かつことはできません」

 フォール゠フロム゠グレイスの顔が、石にように変わった。

「わたくしのことを思い続けてください。そうすれば、再び出会えます」

 私のために犠牲にしてくれたことは、決して忘れない。

 彼女は頭を振った。

「ただ、わたくしのことを忘れないで」

 時はすべてを蹂躙する。しかし、可能な限り抗おう。

「時はあなたの敵ではありません。敵は永遠です」

 そうかもしれないな。さようなら、グレイス。

 そして最後の友人のほうを向いた。

 ノルドン。

 ノルドンがまばたきすると、シャッターが素早くカシャッと音を立て、目を細めて見ようとするかのように、目が点になった。

「貴方ノ声ハ、標準的ニ認メラレル値ヲ、超過シテルデス」

 私は……再び完全になった。変わったんだ。しかしここに長く留まることはできない。ノルドン、望むなら、お前をシギルに送り返そう。

「疑問:次ノ目的地デス? ノルドンモ同行シテ、貴方ヲ守ルデス」

 私は数多の生涯で、数多くの罪を犯した。私は今、罰の場所に行くんだ。お前が一緒に来ることはできない。

「分岐疑問:ノルドンノ存在ガ(必要ナイ)、アルイハ(望マナイ)デス?」

 お前はついて来られないんだ、ノルドン。私の選択ではない。今の私の行動は、他の力が支配している。常にそうだったが、今は私が何者なのかを知り、こうしているあいだにも近づいてきている。

 ノルドンはしばらくウィーンカシャカシャと音を立てていた。そしてクロスボウが彼の手の中でカチカチブーンと鳴りはじめた。

「ノルドンハ、感謝ヲ提出デス。貴方ハ、同一性ヲ見ミツケル助ケヲシテクレタデス」

 お前も、私が自分を見つける助けをしてくれた。ノルドン、お前に自由を与える。探究し、学び、成長するんだ。はるかな未来に、別の次元界で、また会えるかもしれない。

「応答:聞キ届ケ、承認デス。ノルドンハ、ソノ日ヲ待ッテルデス」

 論理を持ち続けるんだ、ノルドン。それが次元界を支配する情熱よりも大きな盾だと気づく日が、いつか来る。

「結末ハ、モハヤ全テノ論理ト同一デハナイデス」

 さようなら、ノルドン。

* * *

 一人の男が、常命の男が、要塞の胸壁に立っている。彼の友人たちはシギルに送られた。かつて足元の広間を漂っていた影たちは解放された。要塞を支えていた後悔が消え去ったかのように、彼が手を置く壁が砕けていく。男は何も見ておらず、何も考えていない。彼の人生では珍しい、平和な瞬間だった。すぐに運命に追いつかれ、〈流血戦争〉へと赴くことになるだろう。それでも、今はまだ。


前章 | 目次 | 原文