プレーンスケープ トーメント 非公式小説

超越せし者

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 〈要塞〉の屋根を横切って歩いた。屋根は十字の形で、私があらわれたのはその端だった。十字の中央に近づいた私は、すぐに叫んだ。

「アンナ!」

 友人たちの死体がすべて、十字の中心の周りに、気味の悪いトロフィーのように綺麗に並べられていた。アンナ、フォール゠フロム゠グレイス、モーテ、ダッコン、ノルドン、皆がそこにいた。敵が私の決意を弱めようと考えているなら、愚かな初手だ。仲間の犠牲を正当化する唯一の方法は、定命性と再び一つになるか、その破壊を確認し、使命を果たすことだけだ。

 突然、棘のある鎧をつけた人物が目の前にあらわれ、口を開いた。

 来たのだな。ならば再び死ね。お前は歓迎されていない、壊れし者よ。

「友人たちに何をした?」

 彼らは死んだのか? 然り。お前とは違い、彼らに命は一つしかない。そして彼らはお前のために、それを無駄にした。いつも通り、お前のせいで死んだのだ。それが定命の者たちのやり方だ。お前に従う者たちすべての運命だ、壊れし者よ。お前は多くのことを忘れてしまった。

「なぜこんなことを?」

 彼らは我を傷つけようとした。こともあろうに、。我は自らを守った。それにより、死すべき運命が彼らを求めた。彼らの死は、彼ら自身の手によるものだ。

 彼らには、この場所を離れる機会を与えた。だが彼らは、お前を助けると決意していたようだ。自らを犠牲にしてもな。

「つまり、お前がんだな」

 ティーフリングの少女は、お前を守ろうと特に獰猛だったぞ。お前のための気持ちが、エリュシオンの炎よりも明るく燃えていた。

 そしてそのタナーリは……非常に強かった。その痛みへの許容力には、バーテズゥさえ恥じ入るだろう。

 彼らの死に、喜びはなかった。

「なら、なぜこんなことを?」

 我の意志ではなかった。彼らをここに連れてきたのは、我ではない。彼ら全員に選択肢があった。そして彼らは、お前のために死ぬことを選んだのだ。

 お前に従う者たちは、常にそうだ。苦しむ魂であるがゆえに、解放を求める。しかし彼らは、その理由を知らぬ。

 お前は忘れる。そして繰り返すだろう。

「お前が何かは分かっている—私の定命性だ。お前の鎧は—木の枝のようにねじれている。ラヴェルの魔法の特徴だ」

 我は妖婆ハグの力によりお前から分かたれたもの、お前の肉体という牢獄から解放されし者なり。

 我はすべての生と共に歩む者。我が声は死の震え、最期の吐息、死にゆく者のささやき声だ。

「私から解放された?」

 お前という癌の殻から分かたれた瞬間、我は生を知った。自由を知った。お前に明け渡しはしない。

「我々は分かれるべきではなかった。我々の分裂によって、次元界が苦しんでいる」

 お前は分裂の意味を知らぬ。記憶が再び死ぬ前に、我々は決してであるべきではないと知れ。壊れし者よ、我とお前が話すのは、これが最後の機会となるだろう。

 定命性に問う必要があった。その弱点を見つけるために。そしてまた、この期に及んでも、興味があったのだ。目の前の生き物について、もっと知りたいと思ったのだ。

「なら知りたいことがある、幽霊よ—はるばる旅してきて、お前が答えられる質問が沢山ある」

 最後の時くらい、お前の好きにさせるとしよう。その後この〈要塞〉は再び静かになる。疑問を問え。その答えも、忘れてしまうだろうがな。

「お前は我々が直接会うのを防ぐため、あらゆることをしてきた。なぜだ?」

 我がお前と会うことをと思っているのか、壊れし者よ? それは違う。

「戦争の武器から造られた鉄のゴーレムがこう言った。遠くから殺し、姿を見せないなら、それが弱点だ。それはの戦いだ」

 我がエネルギーが、この場所を維持するために必要なのだ、壊れし者よ。そうでなければ、お前が死ぬごとに、その首には手が置かれていただろう。我はこの〈要塞〉の壁を越えて、長く旅することができぬ。

「それでも、私が〈要塞〉の壁の中にいるときでさえ、お前はイグナスを使って私を止めようとした。お前自身が止められるときでも」

 あの魔術師は……使いやすかった。お前に対する怒りが渦巻いていた。彼に復讐ふくしゅうさせるのが適切だと考えたのだ。次元界がお前に慈悲を教えられぬなら、あるいはならば。

「彼が復讐ふくしゅうを望んでいた? 彼に秘技を教え、苦しめたからか?」

 そうだ。痛みが彼を教えたように、痛みがお前を教えるだろう。だがあの魔術師は見込みより弱く、そしてお前がここに来た。すぐに、我らのあいだに終わりが訪れるだろう、壊れし者よ。

「それで、私を止めるためにイグナスを送り出し……しかしそれが失敗した時、それでもお前はまだ私に立ち向かわなかった—その代わりに、私を閉じこめるためにあの水晶を置いた」

 そうだ、あの水晶は牢獄だ。おそらく最も偉大な牢獄だろう。我は水晶を使った。次元界じゅうでお前を追うのに飽いたのだ、名を持たぬ者。お前は……見つけるのが

「なぜ難しいんだ?」

 名前に力があるのと同様に、名前がことにも力がある。次元界の眼は、そのような者から外れてしまう。お前のような者から—そして、我のような者から。

 お前は近くに置いておくほうがいい。我が見ることができる場所に。あの水晶は、そのようにお前を閉じこめる場所だ。お前は一体水晶から脱したのだ?

「助けがあった。はるか昔に私がここに連れてきた女性、ダイアナーラが解放してくれた」

 ああ……あの愛に裂かれた霊か。この〈要塞〉の広間で、彼女の残滓を感じたことがある。彼女が再びお前を解放することは。お前の心の殻の中に、大切なものはもうのだ、壊れし者よ。

「他にも—〈髑髏の柱〉から教わったのだが、お前の居場所と、お前にたどり着く方法を知る者は三人いた—一人はトリアス、一人はお前、そして一人は私。お前がトリアスと私を殺せば、お前が誰なのか、どうやってお前を見つけるのか知る者はいなくなる」

 そうだ、あの天使は自らを金色の嘘で守っていた。ついにお前が、我を彼のところに導いたのだ。お前のように、あの裏切り者を見つけるのは難しかった。彼は最終的な死を迎えるだろう。

「つまり、彼を見つけるために私を使ったのか? 彼の知識が消えるよう、私に彼を殺させたかったんだろう—そしてお前を忘れるよう、お前が私を殺そうとした」

 時の刃は、お前の心にまったく血を流させなかった。我の目的はいつもこうだ。お前に忘れさせる。

「だが、なぜだ? なぜ—」

 お前のに、もう苦しめられたくなかったからだ、壊れし者よ。お前は苛立たしく、かつての生を思い出させ、我はそのような記憶を憎んでいる。我は〈要塞〉の中で、平穏でいたかったのだ。お前が我を忘れるように、我もお前を忘れたかった。永遠に。嘘つきめ。お前は常に忘れていた。そして我は、常に覚えていた。常に、そうだったのだ。

「『常に』は、かつてそうだったことを意味しない。私は何度も死に、そして私の記憶は戻ってきた」

 その欺瞞が、ここでお前を守ることなどないぞ、壊れし者よ。

「真実だ。私を殺しても、私は止まらない—もはや殺されても忘れないからだ。私は常にお前を知り、お前がしたこと、ここにたどり着く方法をすべて覚え、そしていずれは、お前を破壊する方法さえ知るだろう」

 ならば閉じこめるとしよう、名を持たぬ者よ。忘れぬなら、お前に自由を許しはしない。

「しかし私は、『最も偉大な牢獄』からすでに脱出している。お前は私を殺すことも、留めることも、もはや忘れさせることもできない」

 そうだ……しかしそれはお前の行いではない。あの愛に裂かれた霊が助けたのだ。二度目はない。お前の骨を粉砕し、四肢を封じ、再び水晶に閉じこめるとしよう。お前が再び次元界を歩むことはない。

「彼女は必要ない。なぜお前は自分で私を倒そうとする代わりに、影を送りこんできていたんだ?」

 彼らは到達距離が長いからだ。それでも、彼らを導いていたのは眼だ。

「つまり影は、お前には不可能な距離まで移動することができるのか?」

 我に不可能など

「しかし、お前は私と戦うためにこの壁を越えることはできない……影を送るだけだ。私と向かい合うのが怖いのか……あるいは嘘をついているのか、ここに留まる理由が他にあるのかもしれない……」

 お前は

「なぜこの場所を維持することがそんなに重要なんだ? お前がそれほど強力なら、なぜここに残りたいんだ? ここにはだろう」

 ここは我の〈要塞〉。我が故郷だ。

「なんて故郷だ。私の後悔という漆喰が塗られ、広間を満たすのは我々が殺した者たちの影だけ。塵の下で朽ちていく見捨てられた過去の遺物、命を奪う負の物質界のエネルギーしか見るものがない。このような場所のための言葉があるだ」

 一言喋るごとに、無知が露呈されているぞ、壊れし者よ。この〈要塞〉は、なのだ。ここに来たものはすべて、我の邪魔をする前に。そして影たちは、静かな生き物だ。

「お前は影と幽霊と共に、ここに残らなければならないんだろう。それがお前を成すものだからだ。お前がこの場所を維持しているのではない。この場所が維持しているんだ」

 ここに残っているのは、我がだ。

? なら〈要塞〉を越えて長く旅することができないと言ったのは、嘘だったのか? それになぜ後悔でできている〈要塞〉を、維持しなければならないんだ?」

 お前はその傲慢さゆえに、幾たびも死ぬことになるだろう、壊れし者よ。お前は侵入者であり、そしてお前が戻ってくることはない。

「私は不死だが、ラヴェルは儀式に不備があったと言った。私は死ぬたびに心の断片を失う。やがて、無数の死によって、自分の考えを持つ能力さえ失うだろう」

 問題はない。お前は死ぬことができぬ。お前の心が失われたとしても、お前の肉体は生き続ける。それで終わりだ。それで十分だ。

「『十分』? なぜだ?」

 我とお前は、些細であれ、つながりを共有している。お前が滅びることは望まぬ。ただ、遠く離れることだけだ。

「考えてみろ。我々がつながっていると言ったな。なら私が苦しむとき、お前もまた苦しむはずだ。お前がここに囚われているのは、お前が私とは異なる方法で苦しんでいるからではないか?」

 弱い苦しみだ。耐えることはできる。

「私が死ぬたびに心の死を迎えるのと同じように、お前が体の死を迎えるという可能性はあるか? 私が精神を失うように、お前は実体を失う。それでこの〈要塞〉を離れることが、この場所を越えて動くことがますます難しくなる。この〈要塞〉はお前の牢獄なだけではなく、お前の墓になるだろう」

 あり得ぬ。

「そうか? 我々はつながっていると言っただろう。お前は確かに、時を経て体が衰えたと感じているはずだ—ラヴェルをにもかかわらず、彼女の枝の骨格をまとっている。お前は衰退を防ぐために、幽霊の姿にその骨格をかぶせている必要があるんだろう」

 お前の言葉に真実があったとしても、何もできまい。お前と共に存在の苦痛を被るくらいなら、この〈要塞〉で速やかに体の死を迎えよう。

「私が死ねば、つながりは切れるはずだ……」

 お前は死ぬことができぬ。

「いや、私が死ねないなら、お前は存在できないだろう。お前は私のなのだからな」

 かつてはそうだったかもしれぬ。もはや違う。我は変わった。我は超越し、偉大なるものになったのだ。

 この傲慢な定命性にはもううんざりだ。終わらせる時だ。しかしまずは、友人たちにできることがないか確かめたかった。彼らは死んだが、魂はまだ近くにあり、肉体と再結合させることができるかもしれない。

「友人たち……彼らの命を戻し、この場所から去らせたい」

 駄目だ。彼らは。死に続けるのだ。

「なぜだ? 彼らを救えないのか? お前にはその力がないのか?」

 ここで、この場所で我の力を問うな。お前から自由となった今、我にできぬことなど何もない。彼らが救われることは、我が意志ではない。彼らは我に挑んだ。そして彼らの死は、我に挑戦する者たちへの見せしめとなるのだ。

「お前に選択肢があるとは思えないな。お前には彼らを蘇生させることができないんだろう」

 壊れし者よ、お前が忘れた生涯において、我は力を観察し、学び、我が体という貯蔵庫に蓄えたのだ。

 お前が暗黒の十年戦争に足を踏み入れた時、その軍事技術のすべてが我が心に刻まれた。お前が狂人ラムと魔法を躍らせた時、我はお前と共に学んだ。お前はすべてを忘れたが、我は違う。生と死を超える力は、我が力のごく一部に過ぎぬのだ。

「つまり我々が共有するつながりが……私が経験したことを経験し、学んだことを学ぶことを可能にしたのか?」

 どうでもよい、些細なことだ。

「ダイアナーラは、私が死を取り消すことができるのは、犠牲者が近くで死んだときだけだと言っていた。しかし、彼女が私の中に見たものは—お前は生と死を超える力が、ごく一部だと言ったか?」

 お前の心は砕けた石だ、誤用と軽視によって鈍っている。力を知っているとしても、扱い方は知るまい。

力を持っているというなら、私もその力を持っているはずだ—たとえ私が、死の瞬間にそこにいなくても」

 お前には、生と死の秘技を学ぶために必要な年月がない。お前は我の前に倒れるのだ。

 心の中にざわめきを感じ、私には学ぶための年月がことに気づいた—無数の私の中で、一度だけ知っていたことがあるのだ。しかしその処置には時間がかかる。定命性はその時間を許してはくれないだろう。私は実際的な私による記録石から、私が出現したエントランスホールの目的を推測した。そして生涯の経験による確信のすべてを、次の発言に込めた。

「ところで、ここに来る途中で、私はあの地下室を開けた。あの大いなる影たちが、〈要塞〉を自由に走り回っているぞ—彼らはもはや、あの部屋に閉じこめられていない」

 だ。

「私を信じないなら、自分の目で確かめてみればいい—私はどこにも行かない」

 すぐに戻り、お前を見定めようぞ、壊れし者よ。お前が影を解き放ったのであれば、お前を彼らに喰わせるとしよう。

「構わない……私はここにいるぞ。お前が生きて帰ってこられたら、だがな」

 すぐに分かることだ。

 定命性は消えた。私は即座にモーテの死体に駆け寄り、力を使った。私が手を伸ばすと、突然モーテが喋りだした。

「待て待て待て! とまれ、大将。あー……アンタに言うことがいくつかある」

「モーテ……?! 死んでなかったのか!」

「まあ、うん—アンタもオレくらい長く死んでれば、死んだふりがマジで上手くなるよ。会話はだいたい聞いてた。他のヤツらに力を使うんだ—オレには必要ない」

「つまりお前は、私がこてんぱんにやられているあいだに、そこでつもりだったのか?」

「まあ、うん。アンタは死ぬわけじゃないだろ。つまり、もしアンタがしくじったら、アンタを覚えてる誰かが必要だ。それに、オレがどれだけ戦いで役に立たないか知ってるだろ—まあ、魔道士や何やを罵ってるとき以外はね……」

 私の力が触れると、ダッコンは不規則な呼吸をして、弱々しく顔を上げた。かろうじて生にしがみついているかのようだ。

「ダッコン、かつてお前は、〈二つで一つの死の宣告〉をした。今がその時だ」

 私がそう言うと、ダッコンは目を閉じて—一瞬、もはや命を保つことができないのではないかと思った—そして開いた。その瞳はもはや、私が知る漆黒ではなかった。それは彼の刃の金属質を帯びていた。そして私は、ダッコンが他の何かになったことを知った—はるかに強力な何かに。ダッコンは息をつき、気を静め、彼の刃が見る間に鋭くなった。

「この刃は、お主のものだ」

 私は力を込めて手を伸ばし、そして空気がざわめき、アンナが身じろぎした—彼女はゆっくりと頭を上げ、混乱したように頭を振った。

「アンナ、私は定命性を見つけた—そしてそいつは、あまり私を好きではないようだ。お前の助けが必要だ」

 アンナの瞳が鋼鉄のような輝きを帯び、そして彼女はうなずいた。

「私はあんたのそばにいるわ」

 私の力がフォール゠フロム゠グレイスに触れると、彼女はふらふらと立ち上がった—混乱してさえも、彼女はどうにか冷静さを保っていた。

「フォール゠フロム゠グレイス—私たちは〈後悔の要塞〉にいる。そして殺人鬼を見つけた。私の定命性だ—それが手に負えなくなっている。まさに今、お前の助けが必要だ」

 彼女はゆっくりとうなずいた。私の言葉を聞いているうちに、力が戻ったようだ。

「中に入った今、この場所はわたくしたちを簡単には出してくれないかもしれませんね」

 私は力を込めて手を伸ばし、魂をノルドンの形にして、ゆっくりと彼の死体に滑りこませた。ノルドンの骨組みが震え、そして彼は飛び起きた。

「ノルドン、今本当にお前の助けが必要だ……殺人鬼を見つけた。それは私の定命性だったんだ」

「命令ヲ待機中デス」

 定命性が突然再び屋根にあらわれた。

 助けになどならないだろう。お前たちは全員死ぬのだ。

 今の私には、定命性を倒せるという確信があった。しかしその過程で、仲間たちも再び死んでしまうかもしれない。その上、私の問題は定命性が分かたれたことから生じたのだから、破壊しても解決にはならないだろう。自分の定命性を再び融合させる方法は、分かったように思う。それは、定命性が他の手段よりも破滅を望むほど私を憎んでいるかどうかにかかっている。何よりも、友人たちが死ぬ必要はない。私は叫んだ。

「待て! 最後に一つ質問がある。人の本質を変えるものは何だ?」

 その質問は無意味だ。

「それでも、我々のことが終わる前に、お前の答えを聞きたい」

 ならばこれが我の答えであり、お前がその証拠だ。人の本質を変えるものなど、

「次元界を越える旅で学んだことがあるとすれば、多くのものが人の本質を変え得るということだ。後悔でも、愛でも、復讐ふくしゅうでも、恐怖でも—何であれ、人の本質を変えることができるんだ」

 ならば、お前は誤った教訓を学んだのだ、壊れし者よ。

「そうか? 私は信念が街を動かすのを、人々の死を食い止めるのを、邪悪な妖婆ハグの心を180度変えるのを見た。この〈要塞〉全体も、信念で造られている。信念は、愛されていないのに愛されているという希望にすがった女性を滅ぼした。かつて一人の男が不死を求め、成し遂げた。そして尊大な幽霊に、自らが私の一部以上のものだと思わせたんだ」

 お前の反抗が、どんな傷よりもお前を傷つけるだろう。信念が人の本質を変えることなどない。

「そうは思わない。十分に信じれば、信念は私を滅ぼすことさえできるはずだ」

 お前には、そのような意志の力はない。

「なら、可能だと認めるわけだな」

 我の忍耐を試すな、壊れし者よ。

 私は意志を内側へ、自分の中心へと集中させた。

 そんなことができると考えているなら、お前は愚かだ。お前には、そのぼろぼろの心を守ることしかできぬ。お前がそれ以上堕ちる余地などないのだ、壊れし者よ。

 集中を続ける。

 。お前は自分が何をしているのか分かっていない。

「分かっている。お前は十分に私を苦しめた。それは今終わる」

 そんなことをすれば、我々は終わりだ。運命はどこにもない。お前は我々両方を滅ぼそうとしているのだ。

「私の考えでは、二つの選択肢がある—我々両方を殺すか、お前に何度も何度も殺されて、わずかに残った心の欠片を失い続けるかだ。もろとも死ぬほうがよさそうだ—お前に第三の選択肢がない限りはな」

 他の解決策などない。

「あるはずだ—我々は、あるべき通りに、再び一つになれるだろう」

 お前は自分が何をしているのか分かっていない。我々が再統合されれば、待っているのは終わりだ。我々にはない。さらなる苦悩へと進むことになる。

「我々のせいで多元宇宙が苦しみ続けるよりはいい」

 一つになれば、我々が苦しむことになる。最初の我々には、我々が免れるべき本質が無数にある。我々は終わりだ。お前は自分が何をしているのか、分かっていない。

「いや、よく分かっている。そしてこれが、唯一の答えだと思う。覚悟しろ」

 我は常にお前を憎んでいたことを知れ、壊れし者よ。一つになってからも、お前を憎み続けよう。ついに死が訪れた時、お前の死は我にとって喜ばしいものになるのだ。

「それくらい問題ない—それは、次元界にとってもな」

 我が憎しみが、いずれ次元界を破壊すると知れ。覚悟しろ。我々は再び一つとなる—お前の最期の瞬間までな。

「いいだろう。再び定命者になる準備はできている」

 定命性は意志を明け渡し、そしてついに、無数の生と、死と、後悔を越えて、我々は再び一つになった。


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