プレーンスケープ トーメント 非公式小説

脱出

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 私は「善良な私」を吸収した。しかし彼は最初の私の残響でしかなく、すべての記憶が残っているわけではないだろう。しかし私には、最初の私の記録がある。ファロドのために見つけた感覚石の日記だ。それを使う時だ。

 球を持ち上げ調べていると、自分の中で最初の私の記憶がうごめくのを感じた。しかしそれはしつこいわけでも、強引なわけでもなく—何年も会っていない友人に会うため、果てしない距離を歩いてきた男の思考のように、穏やかだった。心の中に彼の存在を感じ、球を違う観点から見つめた—醜いわけでも、忌まわしいわけでもなく、生まれたばかりの子供のように尊い—この球は、私の最後の瞬間の貯蔵庫だ。〈灰色の荒野〉でラヴェルに会い、不可能を求める以前の。

 彼女に不可能を求めた理由は知っている。そして必要なことは、球の表面に両手で触れ、後悔をことだけだということも。そして石は自然に開いた。

 手の中で球にしわが寄り、皮がはがれ落ちて青銅の雨に変わり、私を取り囲む。それぞれの雫が、それぞれの断片が私に入りこみ、新たな記憶がうずくのを感じた。失われた愛、忘れられた痛み、喪失の苦しみ—そしてそれと共に、膨大な後悔が押し寄せる。軽率な行動の後悔、苦しみの後悔、戦争の後悔、死の後悔。そしてその圧力に、心がのを感じた—あまりにも多く、すべてが一度に、多くの被害が……あまりにも多く、その痛みで、〈要塞〉全体すら築かれるだろう。

 そして突然、その後悔の激流の中に、再び最初の私を感じた。目に見えず、重さのない彼の手が肩に置かれ、私を支える。彼は喋らず、しかし彼に触れられたことで、突然私は自分の名前を思い出した。

 ……それはとても簡単なことで、想像していたものとはまったく異なり、不意に安らぎを感じた。自分の名前を、本当の名前を知ることで、おそらく自分の最も大切な部分を取り戻したことが分かった。自分の名前を知り、自分自身を知ることで、私にできないことはほとんどないと知った。最初の私の手が肩から消え、彼はわずかに微笑みながら私を見た。

「これが私の名前なのか? しかし、私は—」

 最初の私が指を唇に当て、私を黙らせた。彼は私の腕のシンボルにうなずいた。それを使うべきだと示すかのように。

 シンボル—苦悩のシンボル—は、ただ皮膚に乗っているだけのように、儚く感じた。無意識のうちに、手を伸ばして腕からはがした。それはかさぶたをはがすかのように、わずかな抵抗ではがれた。シンボルをかかげ、その力を使うことができると知った。シンボルをかざして力を呼び出せば、過去の私のすべての痛みと苦しみが敵を襲うだろう。このシンボルは、もはや私を支配してはいない。

「私はもはや、このシンボルを身につけていない。これはつまり……?」

 私はその疑問の半ばで、心の中の重い沈黙に気づいた—私の中に、もはや最初の私の存在を感じることができない。

 私はこの部屋で、三人の私に直面した。ダイアナーラの預言の悪と善の影には、すでに直面した。私の探求を果たすために立ち向かう必要があるのは、あとは中立の影、この〈要塞〉の番人だけだ。三数さんすうの法則の二つの例が私の旅を支配していたことを、独り興味深く思った。

 牢獄の中央の死体置台スラブで、どれだけ思いにふけっていたかは分からない。だが再び周囲の状況に気づいた時、もはや独りではなかった。私の前に、幽霊の姿のダイアナーラがいた。その半透明のガウンは、何らかの霊妙なそよ風に揺れている。彼女が私に目を合わせると、分かたれるような不思議な感覚がした。まるで複数の目を一度に見ているかのような。

「ダイアナーラ……?」

「愛しのあなた、ようやく見つけたわ……あなたが水晶に分かたれた後、ずっと捜していたの—この〈要塞〉は数百マイルも広がっていて、あなたを失ってしまったのではと心配していたのよ」

 彼女の半透明の瞳が私を見極め、体の新しい傷を探した。

「大丈夫なの?」

「大丈夫だと思う—水晶が私を分割したが、今は再び一つだ。しかし、ここに閉じこめられている」

「あなたをここに閉じこめることが、水晶の本当の目的なんだと思うわ。でも私のようなものには、妨げにならない」

 彼女は目を閉じた。

「私の眼には、たくさんのものが見える。この〈要塞〉の広間を、私はよく知っているわ。あなたがここに閉じこめられているのなら、愛しのあなた、私が解放しましょう。どこへ行きたいの?」

「少し、お前と話したい。お前がどう死んだのか……なぜ死ななければならなかったのか」

 私はダイアナーラがここへ来ることになった真実のすべてを知った。彼女に伝えなければならない。たとえその暴露が、牢獄から脱出する唯一の手段を断つことになったとしても。

「何を言っているの?」

「私がお前をこの〈要塞〉に連れてきた意図は、ここで死なせることだった。この場所とつながる者を残す必要があったからだ。お前が私を深く愛していたから、その愛が死を食い止め、お前が霊になるだろうことが、私には分かっていた。これが、お前が今苦しんでいる理由だ」

 私が話しているあいだ、ダイアナーラの顔は仮面のようだった。

「すまない、ダイアナーラ」

「あなたは私をいる? もしそうなら、愛しのあなた、何の問題もないわ」

「初めはお前を知らなかったが、今は愛している。お前の苦しみは、私の苦しみになった。私はお前を助けるためにできることをする」

 これは真実だった。私がアンナとフォール゠フロム゠グレイスを愛していることが、真実であるのと同じように。

「それなら、あなたを助けましょう。方法を教えて。その通りにするわ」

「ここに閉じこめられている。脱出を助けてくれるか?」

「あなたがここに閉じこめられているのなら、私が解放しましょう。どこへ行きたいの?」

「友人たちと再会したい」

「あなたの望みの通りに」

 彼女は手を伸ばした。

「私の手に触れれば、この〈要塞〉の壁はもはや壁ではなくなるわ」

 彼女の手に触れると、突然周囲の壁が霧散し、消えた。次の瞬間、別の場所に立っていた。〈要塞〉の上のどこかに。ナイフのように鋭い狭間胸壁を見渡し、負の物質界の無を見つめた。ダイアナーラを振り返ったが、すでに彼女は消えていた。姿が視界から消えた後も、声は聞くことができた。

「あなたがしたことを赦しましょう。死の館で待っているわ、愛しのあなた」

 私が求めてきた対決によって、すぐに彼女と再会することになる可能性は、極めて高い。


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