プレーンスケープ トーメント 非公式小説

仲間たちの運命

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 影が投げかけられている広間に、イグナスがあらわれた。彼は自分がどこにいるのか分からなかったが、周囲の状況を察知し、口を開いた。

「こ҉こに҉は大҉いな҉る力҉があ҉る」

 イグナスが辺りを見回していると、奇怪な棘だらけの人物が滑り寄ってきた。

 我はお前を必要としている。死ぬべき者どもがいるのだ。

 なぜか彼には、その中に彼が尊敬し憎んでいる主人がいることが分かった。イグナスは奇怪な人物に続き、立ち去った。彼の笑い声が響き渡り、後に続く。

* * *

 モーテは周囲を見回した。大将の痕跡はない。他の者たちも。以前の〈要塞〉への旅から、自力で大将を見つけるのは無理だと分かっていた。彼は大将が、あるいは誰かが、見つけてくれるのを待たなければならないだろう。それまで彼の一番の守りは、死んだふりだ。モーテには死にそうになった経験が山ほどあり、彼は自分がかなり説得力のある演技をできると考えていた。

* * *

「影か」

 ダッコンは周囲の者たちを確認した。他よりも棘が多く光が少ない者が、彼に話しかけた。

 ああ、ギスゼライ。よく覚えているぞ……降伏せよ。

「儂は戦いに倒れるかもしれぬ。だが、敗北することはない」

 お前が我に勝つすべはない。

「儂はここに来たことがある。今回は退かぬ」

 好きにせよ。

 声の主は去った。だが他の影が迫る。まるで闇自体が、ダッコンの視界を覆うかのように。

* * *

「寒すぎるわ」

 アンナは薄暗い通路を歩きながら、独り言をつぶやいた。この場所に独りだと気づいたショックが、彼女の普段の技量を覆い隠してしまっていた。棘のある人影にも、ほとんどぶつかりそうになるまで気づかなかった。

 おお……フィーンドの少女よ。お前をここに連れてきた者はどこだ?

「あんたには見つかりっこない場所よ。あいつに手を出すつもりなら、まずは私を倒すことね」

 お前の言葉には、情欲の力がある。そして尊く儚い理由も。

「それがあんたをぶっ飛ばす力になるなら、どうだっていいわ!」

 興味深い……お前が奴に付き従う理由が、明らかになっていく

「お喋りは十分よ! 戦いがお望みなら、わた—!」

 まさかお前は、自分が奴の目に特別に映っていると思っているのか?

「わ—私を突破するつもりなら、やってみるがいいわ! 私は……」

 フィーンド族よ、我はお前が付き従う者を、幾たびの生を越えて見てきた。奴の心は知っている。そして奴に情欲を感じる者が、数え切れないほどいたこともな。その者たちの中で、お前は間違いなくだ。お前は両親と次元界によって、不純であると定められているのだ……

「その骨箱ほねばこを閉じなさい、聞こえてるのかしら?! 骨箱ほねばこ—」

 これに答えて、沈黙するがいい、小娘。お前が付き従う者は、お前にとって大切なのか?

「私よりも、私の命よりも大切よ」

 ならば死ね。

 アンナは影をまとう人物を攻撃した。しかし独りでは、呼び起こされた魔法に敵わなかった。

* * *

「ここでは影を闇と区別することも難しいですね」

 フォール゠フロム゠グレイスは周囲を見回した。

「生けるもののための場所ではありません」

 おお、タナーリか。

 背後から声がした。彼女は振り向き、棘のある鎧をまとう半透明の存在に立ち向かう。

「それで。あなたが、すべての中心にいる蜘蛛なのですね。数多くの質問があります。この件におけるあなたの目的が、まだすべて明らかになっておりません」

 我が目的は、お前の知るところではない、堕ちたタナーリよ。我が道楽は、その胸の中の黒い心臓を脈打たせ続けることだけだ。望むなら、命を抱えて去るがいい。

「わたくしの心臓は黒くありません。そして命が惜しいわけでもありません。仲間たちが、友人たちが、あなたの〈要塞〉の中にいるのです。彼らと合流し、そしてわたくしたちが付き従う男が、この件を満足のいく終わりに導くまで、立ち去るつもりはありません」

 この愚かな用向きに、満足のいく終わりなどない。お前は不死の仲間をここに残し、この場所を去るのだ。心配することはない。奴が支払う代償は、記憶の喪失だけだ。

「友人たちを見捨てよというあなたの申し出は、同じくらい丁重にお断りしなければなりません。彼が支払う代償は、彼にとっては死にも等しいものなのです。わたくしは少しのあいだ、彼と旅をしました。彼に忘れて欲しくないと願うことが、たくさんあるのです」

 奴は忘れるだろう。無知で居続けることが、奴のなのだ。共に悲惨な道を歩いた者たちすべてを忘れたように、お前のことも忘れるだろう、タナーリよ。奴は死に、忘れ、そして再び死ぬために存在しているのだ。奴は

「それはあなたの判断です。わたくしのことを、そしてこの場所にたどり着くための彼の努力を、忘れて欲しくないという事実は変わりません。彼は十分に苦しみました。そしてわたくしは、目の前で気取る傲慢な生き物よりも、手の届かない場所から殺すことを好む卑怯な生き物よりも、彼に賛同いたします」

「あなたが彼を苦しめることは、もはやありません」

 タナーリ……お前はこの場所における我の力を疑っているのかもしれぬな。力を示せば、疑いも晴れるだろう。

「あなたは、もう十分な害をもたらしました。覚悟なさい」

 お前は何者でもない。我が力は次元界を築き、お前を滅ぼすことができるのだ。

 二人が互いの破壊をもくろみ、魔法のエネルギーが逆まく。しばらくして、一人が地面にくずおれた。もう一人は、棘のある影は、立ち去った。

* * *

「処理中デス。次元界:負の物質界。場所:〈後悔の要塞〉」

 ノルドンはクロスボウと“カチカチ”を交わし、彼らを勇気づけ、あるいは彼らが彼を勇気づけた。棘のある半透明の姿が、闇の中から滑り出た。

 ああ、はぐれた構造物か。

「終幕感ガ、差シ迫ルデス」

 お前は自らを過大評価している。服従せよ。

「貴方ハ、ノルドンヲ助ケテクレタ人ヲ、傷ツケヨウトシテルデス。ノルドンハ、貴方ノ停止ヲ試行スルデス。成功率:ワズカ」

 魔法のエネルギーの矢がノルドンに突き刺さった。

 その体は殻に過ぎぬ。強烈な圧力により砕けるだろう。まだ続けるか?

「貴方ハ、彼ヲ傷ツケヨウトシテルデス。ノルドンガ、貴方ヲ止メルデス」

 さらなる矢がノルドンを襲い、打ち倒した。ノルドンは動かない。彼のクロスボウさえ、音を立てない。


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