プレーンスケープ トーメント 非公式小説

後悔の要塞

前章 | 目次 | 原文 | 次章


 巨大な建物の外の歩道に、独りで立っていることに気づいた。今いる場所からは、建物のほんの一部しか見えない。灰色の無が空を満たしている。わずかな動きが目に留まった。建物から離れる方向の、いくらか離れた歩道のほうだ。私は好奇心を、いつも通りの好奇心を、刺激された。建物の中で十分な敵に出会うことは予想していた。しかし、外で?

 私は建物から離れた。数十歩歩いたところで、その人が見えた。〈葬儀場〉で最初に出会ってから、ずっと避けていた人。私の前に、幽霊の姿のダイアナーラがいた。その半透明のガウンは、何らかの霊妙なそよ風に揺れている。彼女は黒い石の舗装道のふちに立ち、次元界の虚空を見つめていた。

「ダイアナーラ……?」

「愛しのあなた! ここにいては駄目! すぐに去らないと!」

「ダイアナーラ、この場所は何なんだ? これが〈要塞〉なのか?」

「〈後悔の要塞〉よ。私の死の瞬間を留めている場所。私はここから遠く離れられないの。シギルへの道を見つけられるなら、見つけなければならないわ。愛しのあなた、ここに留まっていては、死んでしまうのよ」

「私は不死だ、ダイアナーラ。この場所であっても、あまり心配する必要はないと思うが」

「いいえ、愛しのあなた。この〈要塞〉は違うの—〈要塞〉を取り囲む殻が、他の次元界から切り離しているのよ。その殻が、あなたの不死性の障壁として働いてしまうわ」

「殻? あの〈柱〉は、私が死ねば代わりに他の者が死ぬと言っていた。もし代わりに死ぬ者がいなければ—」

「この場所で死ねば、それで終わりよ。ここには、生きているものはいないのだから—だから気をつけなければならないわ。この呪われた場所を離れて、シギルに戻るのよ!」

「しかし—ここには仲間がいる。つまり彼らは殻の中だ。もし私が死んだら、はどうなる?」

「愛しのあなた、この場所に生きているものを連れてきたのなら、それは何であれ酷く危険な状態にあるわ—影たちとあなたの両方によって。もしあなたがここで死ねば、あなたの不死性が〈要塞〉で一番近い生き物を襲うでしょう。そしてあなたの代わりに死んでしまう。ここから離れなければならないわ、今すぐに!」

「私は戻れない。だから、他に何か助けになることを教えてくれないか? 〈要塞〉の中では何が待ち受けているんだ?」

「〈要塞〉の中に自然な闇はないわ、愛しのあなた。ただあなたの代わりに死んだ者たちの影だけ。この場所のエネルギーが彼らを生かし、そして彼らのあなたに対する憎しみは途方もない。あなたを立ち去らせはしないでしょう」

 彼女は〈要塞〉の壁を見遣った。

「入らないで、お願い!」

「しかし—仲間たちが中にいるんだ。彼らを残して行くことはできない。どこにいるか分からないか?」

「誰かを連れてきたのなら、到着した時に引き離されたのよ—生きているものを分断させて……そして殺すのが、この場所の性質なの」

 彼女は遠くを見つめた。

「〈要塞〉は何マイルも続いているわ—ここで友人たちを見つけるのは難しいでしょう」

「見つけなければならない。このことに、選択の余地はない」

「分かったわ、愛しのあなた……先に進むというなら、これだけは知っておいて—〈要塞〉の入口を過ぎると、数え切れない影がいる巨大な控えの間があるの。素早く行動しなければ、群がる彼らに殺されてしまうわ!」

「それと、もう一つ……」

 ダイアナーラは過ぎゆく記憶をつかもうとするかのように固まった。

「部屋に……部屋に大きな時計があって……」

 彼女の声が安定し、確信を帯びる。

「その部屋を脱するための鍵は時計だと、あなたは言っていたわ……かつてそこに囚われた時に」

 彼女は私を見た。

「止めることができないのは分かっているわ、愛しのあなた—だから、見守っているわね。そして可能であれば、助けましょう」

「お前の指輪を持ってきたんだ、ダイアナーラ。お前の遺産を見つけて」

「その指輪には、まだ私の一部が残っているわ、愛しのあなた。それを持っていれば、私の心も一緒に行くことができる」

 彼女はしばらく目を閉じていた。突然、温かさが通り抜けるのを感じた。ダイアナーラが目を開き、そして微笑んだ。

「それを持って戻ってきてくれることは分かっていたわ。私の祝福が込められたそれを、大切に持っていて。その指輪を通して、私があなたを守るから」

「ありがとう、ダイアナーラ。もう行かなければ」

 私の言葉に、ダイアナーラは視界から消えた。

 来た道を戻り、最初の場所を通り過ぎた。歩道の果ては、円形のポータルだった。ポータルは近づくだけで開いた。私は〈要塞〉に入り、ダイアナーラが言っていた『控えの間』にたどり着いた。

 〈要塞〉のさらに奥へ続くポータルを開く前に、影たちを避け、不可思議な装置を起動しなければならなかった。部屋のほこりに足跡があり、巨大な時計の文字盤には左向きの印があった。これらが意味することは理解できた。以前〈要塞〉を訪れた時に、私はここにいたのだ。最終的に、私は出口のポータルの前に立ち、そして通り抜けて〈要塞〉の別のエリアへと進んだ。


前章 | 目次 | 原文 | 次章