プレーンスケープ トーメント 非公式小説

モーテ、PART 2

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 〈髑髏の柱〉の出来事の後で、モーテと話す必要があった。私はモーテを脇に呼び、柱に行き着いた経緯を再び訊いた。あんなことを経験したにもかかわらず、モーテはすでにのんきな態度を取り戻していた。

「ええと、バートルの第一層、アヴェルヌスに柱がある。〈髑髏の柱〉って呼ばれてるけど、〈頭部の柱〉のほうがそれらしいね。なぐたちの話じゃ、与太者よたもんの頭でできてる。その大半が、生前にあれやこれやの知識を、ちょっと誇張して使った賢者や学者たちだ……それで誰かを傷つけたり、あー、殺したりしたヤツらのな。まあ、オレは死んだとき、あそこに行き着いたんだ。おかしな話だろ?」

「そうでもない」

「あー……」

 モーテはしばらく黙りこんだ。

「ああ、その通りさ。ちっともおかしくない。いいか、オレは生きてたとき、たくさんのことを知ってたはずだ。それで多分、いつも真実を語ってたわけじゃなかった。一度か二度くらい真実を曲げたときに、誰かを本来よりも早く死者帳ししゃちょうの中に導いたかもしれない」

「それが私だったんだろう?」

 モーテはしばらく私を見つめていた。

「ああ。なんでかは分からないけど、大将、そう思うんだ。オレをあそこに送りこんだ一人は、アンタだと思う。積み荷全体が崩れる前の、最後の小枝の束だったんじゃないかな。実は、何が起きたのか思い出せないんだ—〈柱〉で目覚める前の人生がどんなだったのか、ヒューマンだったことすら思い出せない」

「なぜ忘れたんだ?」

「アンタが死ぬときとだいたい同じさ。知らないわけじゃないだろ。アンタはただ……忘れちまう。こんなオレが立派な人物だったとは思わないけど……でも、一体誰なんだ?」

 モーテはため息をついた。

「ただ、仕方なかったんだ。いつでも誠実でいるなんて、最悪だろ」

「地獄行きを宣告されること以外はな。真実を語るよりはずっと酷そうだ」

「ああ……アンタは正しいよ。今回もね」

 モーテは歯を鳴らした。それは私に、指でトントンと叩くような仕草を思い出させた。

「きっとアンタは、善と悪と嘘とペテンに追いつかれる—そんでオレが死者帳ししゃちょうに記されたとき、渡し守に金を払うのはオレの番だ」

「それで、どうやって柱から脱出したんだ?」

「それは……アンタが助けてくれたんだよ、大将。アンタが〈髑髏の柱〉にあらわれたとき、オレは前側まで押し出たんだ。オレの明らかな専門知識と魅力が、アンタを惹きつけたのさ—オレが一番の物知り頭だって、アンタには分かったんだろうね。それでオレはアンタと契約を結んだんだ」

 モーテが話しているうちに、視界がにじんで燃えるような赤になり、わめき声が聞こえた。恐ろしい叫び声、さえずり、怒鳴り、とどろき、そのすべてが自由を求めて叫ぶ。そして、モーテの声……大勢の中でほとんどかき消えそうな、かすかな声。彼は死に物狂いで、怯えているようで、そして……哀れなほど悲惨に困惑していた。

「お前。そこの頭蓋骨。話せ」

 わめき声が沈黙し、そして私は赤い筋のあるちっぽけな頭蓋骨を見た。その割れた顔が地獄のような光を放ち、目を私に向けた。血と膿が横切り流れる中、頭蓋骨は凍えているかのように歯を鳴らした。

「オレ……オレはアンタをた、たたすけられる。アンタがさ、さ探してるものを知ってるんだ……この頭全部……全部の知識を……お願いだ、頼む。オレを解放してくれ。オレにアンタを助けさせてくれ。何でも教える、何でもだ」

「そうか? 誓え、頭蓋骨。最期の日々まで、私に仕えると誓え。さもなければ、お前はそのままだ」

「誓う。誓うよ……だからお願いだ、オレを解放してくれ……オレ……」

 ゴクリとつばを飲みこむモーテを見ていると、彼のうぬぼれが手に取るように分かった。

「オレ……お願いだ。アンタを助けさせてくれ。お願いだよ」

「いいだろう。お前を解放する」

 私が移動したことで視界が滑り、わめき声と叫び声の不協和音が再び始まった。悪夢のような遠吠えとヤジとあざけりと侮辱の群れ……両手が不潔な柱の泥沼に滑りこむのを感じた。噛みつく牙、あご、そして両手が小さな頭蓋骨をはさみ、かさぶたのように柱から引き剥がした……

「終わったぞ」

 傷だらけの手の中の血まみれの頭蓋骨を見下ろした。眼は柱の膿に覆われていて、歯が一度、二度鳴った。泣き叫ぶ新生児が思い起こされた。無力で—かつての私だった男の目から見て—哀れだ。

「私がお前を解放した。お前の生は……お前の死は、私のものだ……モーテ」

 視界が渦巻き、過去の霧は流れ去り、モーテはまだお喋りを続けていた。

「オレたちはしばらく話し合ったんだ、大将、アンタとオレで、この協定が上手くいくかってね、オレたちは互いにとっても感銘を受けてたと思うよ、だからアンタはオレを〈柱〉から招いたんだ、それでそれ以来、ずっと一緒にいるわけさ」

「あ~……それでどうなったんだ?」

「えっと、〈柱〉から出たらその知識の大半を失うなんて、知らなかったんだ……つまり、あのくそったれから出たことなんてなかったから、知るわけなかったんだよ……でもアンタはそのことを、よく理解してくれてたね……」

「持っていると言った知識をすべて失ったのか……?」

 視界が再び渦巻き、目眩がして、内臓がかき回される—骨が砕ける音と、モーテのわめき声が聞こえた—痛みによるわめき声、誰かにやめるように、やめるように叫んでいる……そして私の手が襲いかかる、何度も、何度も……

「忌々しい頭蓋骨め、嘘をついたな。あのおぞましい〈柱〉に押しこんでやろうか。お前はそこで朽ちるのだ」

 金属と思われるもの—床か壁に、骨が当たる音がする。打ちつけられた歯が吹き飛ぶ。殴られた犬のように、モーテが何かをすすり泣くのが聞こえ

「私がお前に与える苦悩に比べれば、〈柱〉での苦しみなど何でもないと知れ」

 視界が渦巻き、モーテの叫び声がお喋りのリズムに変わる。私はモーテを疑っていたが、彼は仲間の中で最も忠実だった。実際的な私との日々、そしてその後の私たちに、彼が公然と拒絶されなかったとは思えない。彼はいつでも去ることができたのに、そうしなかったのだ。

「それで、アンタはまだオレが使えるって気づいて、それでまた仲良くなって、それ以来一緒にいるのさ」

「モーテ、私は〈柱〉に何を望んでいたんだ? そしてお前を解放してから、どれだけ経っているんだ?」

 モーテはしばらく考えこんだ。

「えっと、どれくらいかについては、正確なところは分からないよ、大将—幾星霜、かな。毎回アンタをできる限り助けてたけど、でも……」

 モーテはため息をついた。

「簡単なことじゃなかった。〈柱〉に望んだことについては、分からない—アンタに引っこ抜かれる前のことは、思い出せないんだ」

「今までずっと私と一緒にいたのか?」

「まあ、そうだね、大将。そうするって言ったんだ。モーテはいつだって約束を守るのさ」

 彼は間を置いた。

「まあ、大半はね、へへ。アルボレアであの娘に会ったときは—」

 不意にモーテの口調が変わったことに気づいた—彼がジョークの後ろに何かを隠そうとしていることが分かった。彼が私といる理由に関する何かを。

「モーテ、冗談抜きに、なぜまだ私と旅しているんだ?」

「大将、約束したからって言っただろ?」

 彼は苛立っているように見えた。

「他に何があるってんだ?」

「分からない。私がお前を解放した後、一緒にいる必要はなかったはずだ」

「まあ、もちろんさ、大将、でもオレは—」

 そして突然、彼の口調が琴線に触れ、私はなぜ彼が今まで私といたのかを知った。

を抱いているんだな。はるか昔に、私を死に導いたから。そうだろう? そしてそれ以来、お前はずっと苦しんでいる」

「おいおい、大将。オレが、を抱いてるって? このモーテが?」

「ああ、そう思う。しかるべき運命から解放された時、お前は私を助けようとせざるを得なかったんだ。そして解放された後、立ち去ることもできたのに、お前は残った。恩義を感じたからだ」

 モーテはしばらく黙りこみ、私を見つめた。

「たぶんね。おかしいだろ? 最初はこの感覚が何なのかも分からなかった—ゆっくりと蝕まれてくみたいで」

「つまり、最初はオレをアンタに“結びつける”魔法の副作用だと思ったんだ……でも数百年たって、そんなもんじゃないって気づいた……もっと深いものだって。ただアンタに引き寄せられるように、なんだかつながってるように感じたんだ。たぶん、アンタの苦しみだよ、大将……苦悩だ。分からないけど。たぶんオレは……きっと、自分がしたことにんだ。もし、オレがした何かが、アンタをその状態にしてたとしたら?」

「やっぱりオレは—それかオレだった誰かは—自分の嘘とごまかしの結果をべきだったんだ。〈柱〉に閉じこめられてて、アンタを最初に見た時、なぜかオレが裏切った相手だって分かったんだ。かつて……ずっと昔に」

 モーテはため息をついた。

「オレが知ってるのは、それだけだよ」

「そうか。話してくれてありがとう、モーテ」

「いや、礼なんていいよ……」

 モーテはため息をついた。驚いたことに、彼の声は何か力強く、確信に満ちていた。頭蓋骨の傷や割れ目の一部が、治癒されたかのように消えた。

「感謝するのはオレのほうさ—まるで……肩から次元界を下ろしたみたいな感じだよ」

 いずれにせよ、モーテは私に感じていた借りを返した。話したことによって、彼は借りが返されたと、あるいは少なくとも私の探求の終わりには精算されると、信じることができたのだろう。

 私はフュールに注意を向けた。錬金術の装置が置かれた机で働くフュールに近づくと、彼は私のほうを向き、口を開いた。

「フェッ! 戻ってきたのか! 〈柱〉はなんて言ったんだ? てめえの退屈な質問に答えてくれたか?」

「トリアスのことを教えてくれ」

「こそこそ逃げ回る、偽の光のガキめ! 見下げ果てた……うぐぐ……やつに、法に対する敬意の欠片もねえ裏切りと嘘まみれのやつの手口に、害意なんてねえよ! フェッ! やつは詐欺師だぜ、定命者、なんにも信じるべきじゃねえ。もちろんこれは、思いやりと……」

 フォークト゠タングは地面につばを吐いた。

「……優しさを込めた言葉だぜ。やつの詐欺で、おれは永遠に苦しまなきゃならねえ……やつが死なねえ限りはな」

 彼の笑みは、驚くほど希望に満ちていた。

「このクレーターから出るにはどうすればいい?」

「フェッ……またおれを独りにしてくれるってことか? なら全力の喜びを込めて言うぜ。そのポータルが、上のでけえ骨のケツの下にあるってな。それであの、はいつくばる掘っ立て小屋の街カーストに戻れるぜ。てめえの旅にそれ以上ふさわしい道は思いつかねえな」

 フュールにとって幸運なことに、私も同じくらい立ち去りたかった。彼の家から先を急いでいる時に、下から独り言が聞こえてきた。

「フェッ! どうでもいいぜ……あいつにどこか見覚えがあるなんてことはな」


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