〈髑髏の柱〉の出来事の後で、モーテと話す必要があった。私はモーテを脇に呼び、柱に行き着いた経緯を再び訊いた。あんなことを経験したにもかかわらず、モーテはすでにのんきな態度を取り戻していた。
「ええと、バートルの第一層、アヴェルヌスに柱がある。〈髑髏の柱〉って呼ばれてるけど、〈頭部の柱〉のほうがそれらしいね。
「そうでもない」
「あー……」
モーテはしばらく黙りこんだ。
「ああ、その通りさ。ちっともおかしくない。いいか、オレは生きてたとき、たくさんのことを知ってたはずだ。それで多分、いつも真実を語ってたわけじゃなかった。一度か二度くらい真実を曲げたときに、誰かを本来よりも早く
「それが私だったんだろう?」
モーテはしばらく私を見つめていた。
「ああ。なんでかは分からないけど、大将、そう思うんだ。オレをあそこに送りこんだ一人は、アンタだと思う。積み荷全体が崩れる前の、最後の小枝の束だったんじゃないかな。実は、何が起きたのか思い出せないんだ——〈柱〉で目覚める前の人生がどんなだったのか、ヒューマンだったことすら思い出せない」
「なぜ忘れたんだ?」
「アンタが死ぬときとだいたい同じさ。知らないわけじゃないだろ。アンタはただ……忘れちまう。こんなオレが立派な人物だったとは思わないけど……でも、一体誰なんだ?」
モーテはため息をついた。
「ただ、仕方なかったんだ。いつでも誠実でいるなんて、最悪だろ」
「地獄行きを宣告されること以外はな。真実を語るよりはずっと酷そうだ」
「ああ……アンタは正しいよ。今回もね」
モーテは歯を鳴らした。それは私に、指でトントンと叩くような仕草を思い出させた。
「きっとアンタは、善と悪と嘘とペテンに追いつかれる——そんでオレが
「それで、どうやって柱から脱出したんだ?」
「それは……アンタが助けてくれたんだよ、大将。アンタが〈髑髏の柱〉にあらわれたとき、オレは前側まで押し出たんだ。オレの明らかな専門知識と魅力が、アンタを惹きつけたのさ——オレが一番の物知り頭だって、アンタには分かったんだろうね。それでオレはアンタと契約を結んだんだ」
モーテが話しているうちに、視界がにじんで燃えるような赤になり、わめき声が聞こえた。恐ろしい叫び声、さえずり、怒鳴り、とどろき、そのすべてが自由を求めて叫ぶ。そして、モーテの声……大勢の中でほとんどかき消えそうな、かすかな声。彼は死に物狂いで、怯えているようで、そして……哀れなほど悲惨に困惑していた。
「お前。そこの頭蓋骨。話せ」
わめき声が沈黙し、そして私は赤い筋のあるちっぽけな頭蓋骨を見た。その割れた顔が地獄のような光を放ち、目を私に向けた。血と膿が横切り流れる中、頭蓋骨は凍えているかのように歯を鳴らした。
「オレ……オレはアンタをた、たたすけられる。アンタがさ、さ探してるものを知ってるんだ……この頭全部……全部の知識を……お願いだ、頼む。オレを解放してくれ。オレにアンタを助けさせてくれ。何でも教える、何でもだ」
「そうか? 誓え、頭蓋骨。最期の日々まで、私に仕えると誓え。さもなければ、お前はそのままだ」
「誓う。誓うよ……だからお願いだ、オレを解放してくれ……オレ……」
ゴクリとつばを飲みこむモーテを見ていると、彼のうぬぼれが手に取るように分かった。
「オレ……お願いだ。アンタを助けさせてくれ。お願いだよ」
「いいだろう。お前を解放する」
私が移動したことで視界が滑り、わめき声と叫び声の不協和音が再び始まった。悪夢のような遠吠えとヤジとあざけりと侮辱の群れ……両手が不潔な柱の泥沼に滑りこむのを感じた。噛みつく牙、あご、そして両手が小さな頭蓋骨をはさみ、かさぶたのように柱から引き剥がした……
「終わったぞ」
傷だらけの手の中の血まみれの頭蓋骨を見下ろした。眼は柱の膿に覆われていて、歯が一度、二度鳴った。泣き叫ぶ新生児が思い起こされた。無力で——かつての私だった男の目から見て——哀れだ。
「私がお前を解放した。お前の生は……お前の死は、私のものだ……モーテ」
視界が渦巻き、過去の霧は流れ去り、モーテはまだお喋りを続けていた。
「オレたちはしばらく話し合ったんだ、大将、アンタとオレで、この協定が上手くいくかってね、オレたちは互いにとっても感銘を受けてたと思うよ、だからアンタはオレを〈柱〉から招いたんだ、それでそれ以来、ずっと一緒にいるわけさ」
「あ~……それでどうなったんだ?」
「えっと、〈柱〉から出たらその知識の大半を失うなんて、知らなかったんだ……つまり、あのくそったれから出たことなんてなかったから、知るわけなかったんだよ……でもアンタはそのことを、よく理解してくれてたね……」
「持っていると言った知識をすべて失ったのか……?」
視界が再び渦巻き、目眩がして、内臓がかき回される——骨が砕ける音と、モーテのわめき声が聞こえた——痛みによるわめき声、誰かにやめるように、
「忌々しい頭蓋骨め、嘘をついたな。あのおぞましい〈柱〉に押しこんでやろうか。お前はそこで朽ちるのだ」
金属と思われるもの——床か壁に、骨が当たる音がする。打ちつけられた歯が吹き飛ぶ。殴られた犬のように、モーテが何かをすすり泣くのが聞こえ——
「私がお前に与える苦悩に比べれば、〈柱〉での苦しみなど何でもないと知れ」
視界が渦巻き、モーテの叫び声がお喋りのリズムに変わる。私はモーテを疑っていたが、彼は仲間の中で最も忠実だった。実際的な私との日々、そしてその後の私たちに、彼が公然と拒絶されなかったとは思えない。彼はいつでも去ることができたのに、そうしなかったのだ。
「それで、アンタはまだオレが使えるって気づいて、それでまた仲良くなって、それ以来一緒にいるのさ」
「モーテ、私は〈柱〉に何を望んでいたんだ? そしてお前を解放してから、どれだけ経っているんだ?」
モーテはしばらく考えこんだ。
「えっと、どれくらいかについては、正確なところは分からないよ、大将——幾星霜、かな。毎回アンタをできる限り助けてたけど、でも……」
モーテはため息をついた。
「簡単なことじゃなかった。〈柱〉に望んだことについては、分からない——アンタに引っこ抜かれる前のことは、思い出せないんだ」
「今までずっと私と一緒にいたのか?」
「まあ、そうだね、大将。そうするって言ったんだ。モーテはいつだって約束を守るのさ」
彼は間を置いた。
「まあ、大半はね、へへ。アルボレアであの娘に会ったときは——」
不意にモーテの口調が変わったことに気づいた——彼がジョークの後ろに何かを隠そうとしていることが分かった。彼が私といる理由に関する何かを。
「モーテ、冗談抜きに、なぜまだ私と旅しているんだ?」
「大将、約束したからって言っただろ?」
彼は苛立っているように見えた。
「他に何があるってんだ?」
「分からない。私がお前を解放した後、一緒にいる必要はなかったはずだ」
「まあ、もちろんさ、大将、でもオレは——」
そして突然、彼の口調が琴線に触れ、私はなぜ彼が今まで私といたのかを知った。
「
「おいおい、大将。オレが、
「ああ、そう思う。しかるべき運命から解放された時、お前は私を助けようとせざるを得なかったんだ。そして解放された後、立ち去ることもできたのに、お前は残った。恩義を感じたからだ」
モーテはしばらく黙りこみ、私を見つめた。
「たぶんね。おかしいだろ? 最初はこの感覚が何なのかも分からなかった——ゆっくりと蝕まれてくみたいで」
「つまり、最初はオレをアンタに“結びつける”魔法の副作用だと思ったんだ……でも数百年たって、そんなもんじゃないって気づいた……もっと深いものだって。ただアンタに引き寄せられるように、なんだかつながってるように感じたんだ。たぶん、アンタの苦しみだよ、大将……苦悩だ。分からないけど。たぶんオレは……きっと、自分がしたことに
「やっぱりオレは——それかオレだった誰かは——自分の嘘とごまかしの結果を
モーテはため息をついた。
「オレが知ってるのは、それだけだよ」
「そうか。話してくれてありがとう、モーテ」
「いや、礼なんていいよ……」
モーテはため息をついた。驚いたことに、彼の声は何か力強く、確信に満ちていた。頭蓋骨の傷や割れ目の一部が、治癒されたかのように消えた。
「感謝するのはオレのほうさ——まるで……肩から次元界を下ろしたみたいな感じだよ」
いずれにせよ、モーテは私に感じていた借りを返した。話したことによって、彼は借りが返されたと、あるいは少なくとも私の探求の終わりには精算されると、信じることができたのだろう。
私はフュールに注意を向けた。錬金術の装置が置かれた机で働くフュールに近づくと、彼は私のほうを向き、口を開いた。
「フェッ! 戻ってきたのか! 〈柱〉はなんて言ったんだ? てめえの退屈な質問に答えてくれたか?」
「トリアスのことを教えてくれ」
「こそこそ逃げ回る、偽の光のガキめ! 見下げ果てた……うぐぐ……やつに、法に対する敬意の欠片もねえ裏切りと嘘まみれのやつの手口に、害意なんてねえよ! フェッ! やつは詐欺師だぜ、定命者、なんにも信じるべきじゃねえ。もちろんこれは、思いやりと……」
フォークト゠タングは地面につばを吐いた。
「……優しさを込めた言葉だぜ。やつの詐欺で、おれは永遠に苦しまなきゃならねえ……やつが死なねえ限りはな」
彼の笑みは、驚くほど希望に満ちていた。
「このクレーターから出るにはどうすればいい?」
「フェッ……またおれを独りにしてくれるってことか? なら全力の喜びを込めて言うぜ。そのポータルが、上のでけえ骨のケツの下にあるってな。それであの、はいつくばる掘っ立て小屋の街カーストに戻れるぜ。てめえの旅にそれ以上ふさわしい道は思いつかねえな」
フュールにとって幸運なことに、私も同じくらい立ち去りたかった。彼の家から先を急いでいる時に、下から独り言が聞こえてきた。
「フェッ! どうでもいいぜ……あいつにどこか見覚えがあるなんてことはな」