プレーンスケープ トーメント 非公式小説

ラヴェルのメッセージ

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 次の石は青ざめた緑色で、台座にしっかりと固定されている。その銘は、『メッセージ』だ。

 目を閉じると、両腕からすべての感覚が抜き取られたかのように、皮膚がかじかむのを感じた。疲れている……とても疲れている。まばたきをしようとするも、闇は闇のままだ。まぶたが柔らかく緩慢に感じられ、反応しない。汚い床と思われるところにうずくまっている。周囲には銅を含んだ血の臭いと……ハーブ? 私はなぜここに? ここに来たのは—何のためだ? 思い出せない。パニックがこみ上げてくる……

「あぁ……目覚めたかい? 質問は、おしまいかねえ?」

 年老いた女性の声だ。厚い塵の層を通して聞こえてくるかのような、かすれたしわがれ声だ。全力で試みても目は開かず、見ることができない。しかし私は、恐怖の震えを感じた。何かがおかしい、ひどくおかしい。答えようとしたが、ゼーゼーという音しか出せなかった。舌が感じられない……そして眼も? 私の眼はどうなってしまったんだ?

「今、おまえはわたしに対して、話した、だから代償を支払ったんだよ、んんん?」

 老婆は面白がっているようだ。そして声音が鋭く下がる。

「もうおまえの質問はおしまい、今からは聞くんだ、わたしの言葉をおぼえて、わたしのことを考えながら、生きるんだよ」

 彼女はしゅうしゅうと音を立てた。

「聞こえてるならうなずきな、さもないと、少しいただくことになるよ」

 私はためらいながらもうなずいた。

「わたしを、おぼえておくんだよ。石の中に、おまえの催事の場の中の、かわいらしいきらめきの中に—そいつをコップにして、おまえが感じることを注ぐんだ、そうして傷とタトゥーの皮膚を着たおとこのために、おぼえておくんだ、彼は記憶を探してるけど、見当違いなんだよ。頭がよければ、わたしを知ることになるはずさ。わたしを見つけるよう伝えるんだ—もし見つからないなら、きらめく石のところに来るように言うんだ、それでわたしたちは話せる、わたしのいとしいおとこと、わたしはね」

 彼女は間を置き、再びしゅうしゅうと音を立てた。

「聞こえてるなら、、ぼろきれ!」

 私はあわててうなずいた。

「あぁ……そんなに聞いてくれるなんて、かわいくて親切だねえ……彼がきらめく石のところに来たら、わたしのを言うように伝えるんだ、そうすれば、おまえの痛みも無駄にはならないよ……」

 老婆が離れ、声が小さくなっていく。

 再び喋ろうとしたが、吐くようなごぼごぼという音しか出せない。何が起きた? この人物は誰だ? なぜ私は……そして私は、気を失いはじめた……

「ラヴェル! ラヴェル、私だ!」

 不意にいくらか意志を取り戻し、私は叫んだ。長い沈黙が訪れた。

「あぁぁぁ……わたしのいとしいおとこ」

 ゆっくりと足を引きずる音がして、左眼に鋭い痛みを感じた。私はあえぎ、そして突然、かろうじて見ることができるようになった—片方だけの眼を通して。灰色の小屋の汚い床に横たわり、そこには血が、私の真っ赤な血が、周囲の灰色の塵にしみこんでいく。両腕はなく、両足は膝から切り落とされている。それでも……麻痺していて、痛みはなかった……あるのは恐怖だけだ。誰かが私を見下ろしている……私は顔を上げた。

 血まみれのぼやけた視線を上に向けると、恐ろしい青みがかった灰色の顔が、黄色い牙を見せて微笑んでいるのが見えた。

「ラヴェルは嬉しいよ—このメッセンジャーがうまくいくか、わからなかったんだ、彼を少しお皿によそったら、弱ってしまったからねえ……」

 彼女はかぎ爪を私の前にかざした。その先端には、眼球が突き刺さっている—私の右眼が。

「それでも、彼は催事の場に帰って、わたしたちの時間を分かち合ってくれたみたいだねえ。そうしておまえが来た……大成功だよ!」

 もし本当にラヴェルと話しているのであれば、知りたいことが山ほどある。

「ラヴェル……お前には質問が沢山ある」

 老婆は頭を振った。ぼやけた視界に、同時に三つの像が映る。彼女の灰色の髪の毛は、いばらのように肩へと流れ落ちている。

「駄目だよ、答える時間だけだ、ラヴェルにあるのはね、彼女には、おまえの推測に費やす時間はないんだ。これを知っておくんだよ、しっかりとね。おまえはわたしを、んだ、わたしのいとしいおとこ」

 私はすでにそうしようとしていた。

「しかしどうやってだ? 私には—」

「チッチッチ! 誰も知らない〈貴婦人レディ〉の場所さ。さあシーッだ、ラヴェルの話を聞きな、おまえがしなきゃならないことは沢山あるんだからね—わたしを見つけるためには、三つのことが必要だ。扉を見つけて、鍵を知って、そして鍵をんだ」

 私はどもりながらも扉について訊いた。

「扉は完成品じゃなかったよ……少なくとも、わたしが最後に見たときはねえ、んんん? でも時が過ぎて、今は仕上がってるはずさ。炉と鋼の場所に行くんだ。たぶんそこで、わたしのところに来るための扉が、見つかるはずさ……」

 鍵が彼女の一部—娘も含めて—だということは知っている。しかし、どうやって開くんだ?

「鍵を開く? どういう意味だ?」

「鍵を知るだけじゃ不十分なのさ、ラヴェルはそう思うね。鍵を知って開く、二つを組み合わせる必要がある……ときには、本質がわからなくなることもある……でも、おまえは知ってるはずさ……」

 ラヴェルがヒヒヒヒと笑う。長くぞっとする笑い声が、私の耳を苦痛で満たす……

「ラヴェル……これが他の誰かの経験なら、なぜお前と話せているんだ?」

「ラヴェルがするのは、石と経験とお喋りさ、でも今は、どうやって話してるかは言わないよ」

 彼女はなだめるように話した。

「ラヴェルの枝分かれと絡みつきは多いんだ、彼女には、も多い。わたしにはおまえが必要だ、おまえがそれを知ることが、必要なんだよ」

 必要だと彼女が考えた助言は、すべて与えられたと感じた。この経験を終わらせようとした時、彼女の最後の申し出が、私を驚かせた。

「戻りな—わたしは、できる助けをするつもりだよ……」

 ラヴェルは最後に恐ろしい笑みを浮かべ、黄色い牙を見せた。唇から黒い舌が突き出て、からかうように口の端に残った。

「でも結局は、一つの疑問だけが残るのさ……」

「どういう意味だ、ラヴェル?」

「たった一つだけ、わたしが訊くのは……」

 ラヴェルの瞳が炎のように燃え、赤い光が彼女の顔を血のような赤色に変える。

「人の本質を変えるものは何だ?」

 その質問と共に、身震いが雷のように通り抜け、体が燃えるように感じた……私はすぐに石から離れた。視界が晴れ、再び緑色の石の前に立っている……それは以前と違い……何か、もっと恐ろしいものに見えた。

 もう十分だ。私は〈催事場〉を離れ、寝る場所を探した。


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