プレーンスケープ トーメント 非公式小説

感覚石の罠

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 クウェルを部屋に残し、考えながら感覚器館かんかくきかんを歩き回った。ふと視線を上げると、赤い感覚石の前に立っていることに気づいた。かすかに知っているような気がしたが、その台座の銘『アルボレアの森を渡る一週間の狩りの旅』には、何も特別なものはなさそうだ。

 調べても害はないだろう。この感覚を始めてみた。

 どこかの森の奥深くで、白いテントの輪の中に立っていた。周囲の樹々は、見たことがあるものよりもはるかに巨大だ。しかし突然、頭蓋骨の後ろで奇妙な刺すような感覚があった……

 周囲が無色のにじみに溶け、大きな灰色の球体の内部に見えるものにゆっくりと変化した。私の向かいに、私とほぼ同じ姿の人物が立っている。薄闇の中でその目が光り、狂った笑みが浮かんだ。

「来るとぞ……」

「お前は誰だ?」

「おお、のか? あのは教えてくれなかったのか? 俺が目覚めたときには、実に便利にいたぞ……俺を『』と呼びやがるあの日記がな! ハッ! 燃やしてやった、俺が見つけたものは、燃やしてやった……」

 吐き気を感じた。日記が、私の人生が、ファロドでも塵人ちりびとでもなく、私自身によって失われていた。その日記から、何か少しでも学べていれば。

「何と書いてあったんだ?」

しかなかった! 自分を忘れた男、別の俺に関する汚らわしい言葉、後の人生で役立つよう書かれた、そいつらの経験……め! 人生だ。! !」

「つまり……お前は過去の私の一人なんだな?」

 この人物が私の姿である理由は分かった。

「こんなに入れるなら、そうだな」

「ここはどこだ?」

「おお、か?」

 彼は周囲を示し、忍び笑いをもらした。

「ほんのささいな。お前らは、だけじゃ不十分だと気づいたのさ……かけて永遠に必要がある。ようやく気づいたか。そうだ、この感覚石から出る方法はない……お前の心はここに封じられた。お前のために残したの意味に、やがて気づくだろう……肉体が腐りきる前に、すぐにが満たしてくれる」

 彼はクスクスと邪悪に笑った。

 彼の言葉を受けて、慎重に考えた。他の私と区別するために、彼のことは心の中で「偏執的な私」と呼ぶことにした。彼のために時間を取らない理由もない。

「なら、いくつか質問がある……」

 過去の私は腕を組み、腹立たしげに顔を背けた。髪の房が少し多いこと以外は、私と瓜二つだ—彼の腕にも、私と同じタトゥーがある。

「罠の十二面体を作ったのはお前か?」

「何を言っているか分からないな。へ。へへ。ああそうさ、あれはだろう? 少しはみたか? 失ってたらいいんだがな?」

 彼は陽気に笑った。

「お前がタトゥーを入れたのか?」

「違う!」

 彼はひどく取り乱した。

「それは奴の、あの野郎の仕業だ。燃やそうとしても、皮膚がタトゥーと一緒にしやがる! した、ともした…………」

 ふむ……この正気ではない私は、アーウィンが話していた者だろう。彼が言った「実際的な私」は、ダッコンとモーテが知る者かもしれない。彼はなぜ、タトゥーを破壊しようとしたのだろうか。

「だが……なぜだ?」

 彼は不快そうに目をしばたたかせた。

を感じるのは、ように読まれるのは、気が狂うだろうが……」

「この罠はどうやって作ったんだ?」

「それは言えないな……複製することもできない。作るために使った魔法は。俺にとってもな。だが、だろう……経験の下に経験を。俺以外のには作用しないようにな……」

「つまり、石の中に二つの感覚が?」

「ああ。アルボレアの狩猟の旅と、この

 彼は突然、私のことを警戒しだした。

 私は意志の力だけで、もう一つの感覚に押し入ろうとした。

「何を……何を? !」

 彼を無視し、別の感覚への侵入を続ける。そしてついに、経験—アルボレアの狩り—に押し入り、罠に引き戻される前に感覚を終わらせることができた。


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