プレーンスケープ トーメント 非公式小説

ルビコン

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 私たちは金属製の立方体の部屋に立っていた。四つの壁に扉があるが、三つはふさがっている。一つだけ開いた扉の近くに、一体のモドロンがいた。

 近づくと、彼は無感情な目を私に向けた。

「コンニチハ、冒険者ヨ。ダンジョン機構ルビコンヘヨウコソ。ルビコンノダンジョン体験ヲ選択シテイタダキ、アリガトウゴザイマス。コチラノ扉カラ、ルビコンニ入場スルコトガデキマス」

 質問しようとしたが、彼は同じ言葉を繰り返すだけだった。私は肩をすくめ、オープニングを通り抜けた。

 次の部屋も、四つの扉がある金属の立方体だった。同じような見た目の三体の生き物が立っている。一番近くにいるのは、淡い緑色の皮膚の機械の男だ。構造物であるにもかかわらず生き生きとした顔を持ち、私に対して渋面を見せた。

 私はあいさつを試みた。

「グルルル」

 機械の男は私に対してうなり、そして固まり、私の反応を見定めている。

 彼は内蔵された剣で武装しているが、私の胸ほどの背丈しかない。鎧もとても薄そうに見える。そのことが彼の反応を滑稽なものにしていた。

「それで私が怯えるはずだったのか?」

 彼は混乱したようだ。

「グルルル?」

 そして弱々しい身ぶりで私を脅した。

「それで私が怯えるはずだったのかと訊いたんだ」

 私の質問を考えているあいだ、彼はしばらく私を見つめていた。

「はい。『グルルル』は脅しを示す音です。さらに脅しに重みを加えるため、適切な身ぶりを行いました。予想された反応は、恐怖です。この後の戦いで、それが私に優位をもたらすのです」

 彼は飛びかかってきた。

 三体の生き物は弱く、すぐに床に散らばる部品となった。

 ダッコンが言った。

「ここはリンボであるが、メカヌスのようでもある」

 そのコメントに驚いて、彼を一瞥いちべつした。彼はギスゼライだ。私たちがリンボにいるのは間違いないだろう。

 次の部屋に入ると、機械の生き物が一体だけいた。何者か尋ねると、彼は不意をつかれたようだ。何をすべきか分からないかのように、頭を傾けて見つめてくる。

「私はモンスターです。戦いますか?」

「冗談だろう……」

 彼はしばらく私を見つめ続けた。

「いいえ……グルルル」

 そして攻撃してきた。彼を処理して、次の部屋に進んだ。そこにいた生き物は話す間もなく、私たちが部屋に入るやいなや叫んだ。

「悪の魔法使いの名のもとに死ね!」

 そして武器を振り回してきた。しかしその悪の魔法使いが何なのか尋ねると、彼は武器を振るのをやめてしばらく考えた。

「ええと……ダンジョン機構ルビコンの難易度をハードにするまで存在しない人です。いやはや、そうなると大変ですよ。それはそれとして、悪の魔法使いの名のもとに死ね!」

 そう言うと襲いかかってきて、すぐにばらばらになった。

 次の部屋の生き物は、初めは私に顔をしかめていたが、突然それをやめて怖がるふりをした。

「ひえええ! ヒーローだ。悪者を殺しに来たに違いないぞ。ああ悲しいかな、こんなときに限って勤務中だなんて!」

「何をしているんだ?」

「馬鹿ですね、台本ですよ、台本。あなたが協力しなかったら、どうやって役割を演じられるんです? ええと、どこでしたっけ……」

 彼はしばし考えた。

「ああ、思い出しました、あなたを懲らしめようとしていたんです」

 彼は攻撃してきて、先ほどの機械よりも少しだけ長く持ちこたえた。その戦闘が終わった時に、仲間のことをもっと学ぼうと、レディ・グレイスがダッコンに話しかけた。

「あなたの修練の度合いはとても素晴らしいですね、ダッコンさん」

「ゼルシモンの眼前では、何者でもない」

「ご自身に厳しすぎるのではないでしょうか?」

「儂は長き道を旅せねばならぬのだ。これは始まりに過ぎぬ」

 さらにいくつかの立方体の部屋を通り抜け、機械の住民たちを容易に打ち倒した。そして最終的に、別の立方体の部屋に転がりこんだ。複雑な時計仕掛けの機械が壁を覆い、半ダースほどのモドロンがぼんやりと立っている。私はその一体に素性を尋ねた。

「我々ハ、モドロンデス」

 それは彼の名前がモドロンだという意味なのか訊いた。

「我々ハ、モドロンデス。名前ハ所有シテイマセン。我々ハ、モドロンデス。貴方ガ視認シテイル全テガ、モドロンデス。我々ハ、ヒトツデス」

「承知した。お前たちは皆モドロンだ。しかしモドロンの名前は何なんだ? 私が話しているモドロンの名前は」

 モドロンは散発的にカンカンカンと音を立てはじめた。腹立たしげな表情で、私を見つめ続ける。

「我々ハ……私ハ……」

 彼が目をそらすと、カンカンカンという音は消えた。

「我々ハ、モドロンデス。我々ハ、モドロントイウ全体ノ同一性ノ他ニハ、同一性ヲ所有シテイマセン。我々ハ、名前ヲ所有シテイマセン」

「なら、どうやって見分けているんだ?」

 モドロンが私の質問を考え、間が空いた。

「我々ハ、認識シテイマス。我々ハ、モドロンデス。全体ノ一部デス。貴方ガ手ヲ腕ノ一部ト認識スルヨウニ、我々ハ全体ノ一部ヲ認識シテイマス」

 この場所が何なのか尋ねると、彼は最初のモドロンと同じように不十分な返答をした。

「ダンジョン機構ルビコンデス」

 突然、これまで歩いてきた部屋と〈くすぶる死体亭〉の次元渡りカンドリアンの言葉が、ダッコンの言葉と結びついた。カンドリアンがリンボの旅で目撃した、つなぎ合わさった立方体の中に、今私たちはいるのだ。ダンジョン機構ルビコンよりも、ルビコン・キューブと呼ぶべきだろう。私はモドロンに、この「機構」についてもっと教えるよう求めた。モドロンは顔をしかめ、部屋を一瞥いちべつした。

「我々ガ認識スベキハ……我々ガ、モドロンダトイウコトデス。我々ハ全体ノ一部デス……我々ハ……該当スル情報ガ存在シマセン。疑問ハ、技術者ニ連絡シテクダサイ」

「その技術者はどこにいる?」

 モドロンは周囲を見渡した。

「我々ハ、認識シテイマセン。該当スル情報ガ存在シマセン……我々ハ、混乱シテイマス……」

 もう一体のモドロンに話しかけ、この場所について尋ねた。

「ダンジョン機構ルビコンプロジェクトデス」

 詳細を訊いたところ、このモドロンは協力的だった。彼は柔らかいブンブンという音を発しながら答えた。

「ルビコン:プロジェクトノ目的ハ、一般的ニダンジョント解釈サレル環境ヲ包囲スル社会的オヨビ非社会的ナ力学ヲ測定シ、ソノヨウナ環境デ発生スル傾向ガアル異常ノ説明ヲ試行スルコトデス」

「それをどうやって行うつもりなんだ?」

「ルビコンハ、一般的ニ『ダンジョン』ト呼称サレル物ヲ形成スルヨウニ連結サレタ複数ノ部屋ヲ形成スルコトガ可能デス。各ダンジョンハ、三種類ノ難易度:イージー、ノーマル、ハードカラ、ヒトツヲ選択スルコトガデキマス。ソノ後、ダンジョンニハ、難易度ニ対応シタモンスター、罠、宝物ガ配置サレマス。生成サレタダンジョンハ、十分ニ冒険スルコトガデキマス」

 モドロンは低いブンブンという音を発しはじめた。

「解答スベキ疑問:人々ヲダンジョンニ誘引スル物ハ何カ? 危険ナ場所デアリナガラ、ナゼ人々ハダンジョンニ侵入シヨウトスルノカ? ソモソモ、ナゼダンジョンハ存在スルノカ? 我々ニハ、理解デキマセン……」

 彼は固まった。

「私……ニハ……」

 このモドロンは、私が出会った中で初めて個性の兆しを見せた。

「お前は『我々』の代わりに『私』と言いはじめているぞ……」

 モドロンは心配そうな顔をして部屋を見渡した。

「貴方ハ、エラーデス。我々ハ、モドロンデス。我々ハ、全体デス……我々ハ、ソノコトヲ議論シマセン」

「確かに聞いたぞ。お前は『私』と言いはじめている……」

 モドロンは顔をしかめた。彼の返答には、怒りが含まれていた。

「イイエ。我々ハ、モドロンデス。全体ノ一部デス。コレ以上ハ、議論シマセン」

 怒りのブンブンという音が部屋を満たし、そして収まった。

 彼は初めて感情を示したモドロンでもあった。しかしその不整合を認めるつもりはないようだ。私は彼が話した難易度設定に興味をひかれた。

「分かった。お前が話した難易度に挑戦してみたい」

 モドロンが答える前に、意味ありげな間があった。

「要求ハ拒否サレマシタ……事故ニヨリ……プロジェクトハ停止シマシタ」

「どんな事故だ?」

「ダンジョンノ構造ガ不安定ニナリ、不確実性ガ発生シテイマス。作動シタ安全装置ガダンジョンヲ崩壊サセ、不確実性ガ発生シテイマス。ポータル・レンズガ誤作動シ、拠点次元界メカヌストノ接続ガ切断サレ、不確実性ガ発生シテイマス。ダンジョンノ再起動ガ必要デス」

「なら、なぜ再起動しないんだ?」

「再起動ハ、プロジェクトディレクターノミガ、開始デキマス。ポータル・レンズガ誤作動シ、拠点次元界メカヌストノ接続ガ切断サレマシタ。メカヌスカラ、後任ノディレクターヲ取得スルコトガデキマセン」

「整理させてくれ。ディレクターがいなければ再起動できず、再起動しなければディレクターを呼べないのか?」

「正確ナ評価デス。プロジェクトハ停止シマシタ」

 いいことを思いついた。

「いいか、私は冒険家で、いくつかダンジョンを踏破したことがある。私をディレクターにしてはどうだ?」

 突然部屋がブンブンという音で満たされ、そして同じように突然静まった。

「支援ヲ歓迎シマス。貴方ハ現在、プロジェクトディレクターデス。次ノ作業ニツイテ、指示ヲ請求シマス」

「ダンジョンを再起動するんだ」

「再起動ヲ初期化中……」

 部屋を満たす振動音が、耳ではなく体で感じられた。

「既存ノダンジョンヲ破壊中……」

 音の強さが増し、床が振動しはじめた。

「新規ダンジョンヲ初期化中……」

 音の大きさが増大し、頭が爆発しそうになる。そして突然、部屋が静まった。

「再起動完了。ダンジョン機構ノ状態:イージー。更ナル指示ヲ受容シテイマス、ディレクター」

 モドロンは続けて説明を行った。このダンジョンからは私が知っているあらゆるポータルに移動することができ、またダンジョンが再起動されるときに残っていた生き物やアイテムは破壊される危険があるらしい。ハードレベルではどのような構成物が配置されるのか興味があったため、再起動を命じた。

 ダンジョンの部屋は同じように見えたが、モンスターはサイズが大きく、重い鎧と二つの武器を備えていた。私はその一つと会話を試みた。

 彼は答えた。

「こんにちは、侵入者よ」

「なぜ私が侵入者だと思ったんだ?」

「私たちとは違うからです。そのため、あなたは侵入者です。侵入者として、あなたは死ななければなりません」

 そして襲いかかってきた。

 彼らを倒すのははるかに難しく、いくつか傷を負った。次の部屋では、彼らが何をしているのか尋ねた。

「あなたの成功、失敗、すべての行動を悪の魔法使いに報告しています。私たちはあなたから学びます。あなたのおかげで、私たちは改善されるのです」

 そして攻撃してきた。再びの厳しい戦いの後、彼は倒れた。次の部屋でも質問した。彼は頭を傾けて、不思議そうな顔をした。

「なぜ私たちに質問し続けるのですか? 理解できません」

「いつでも何かを学ぶ可能性があるからだ」

 彼は視線を外して少し考えた。そして視線を戻し、うなずいて同意した。

「そうですね……それは正しいようです……あなたに痛みを教えることにしましょう」

 そして攻撃してきて壊れた。

 さらにいくつかの部屋に入り、時計仕掛けの構造物を破壊した。新たな部屋に入ると、モーテがコメントした。

「鳩時計の中にいるみたいだ。ぽっぽー……はとぽっぽー」

 その部屋はこれまでよりも大きかった。そしてさらに多くのモンスターがいた。加えて、部屋には新しいタイプの構造物がいた。

 見たことがある構造物は無視しながら進み、ローブ姿の機械の男に近づいた。すると彼は微笑を浮かべ、わずかに頭を下げた。

「ついに来たな……」

 彼の声には、この迷路で話した他の生き物のような単調さが欠けていた。

 私があいさつを返すと、彼は再び頭を下げた。

「こちらこそ、ごきげんよう」

 彼は頭を傾け、興味深げな表情を見せた。

「それで、ルビコンの支配をめぐって戦おうか? それとも、君の好奇心を鎮めるために会話をすべきだろうか?」

 彼は私の答えを待った。

「確かに興味がある。対話をしたい」

 彼は上品にうなずいた。

「おお、知識人だな。そうでなければ、失望していたところだ」

「お前は誰だ?」

 彼はわずかに頭を下げた。

「私は〈練達の魔術師〉ルビコン。この領域に住まう紅き構造物を統べるのは、私だ」

 彼の会話は、他の構造物たちよりもパターン化されていなかった。

「つまり、お前が悪の魔法使いなのか?」

 彼は考えながら顔をしかめた。

「悪という言葉は、気持ちのいいものではないな。私の考えが多くの点で他者と一致しないことは認めよう。しかし、それが悪になるだろうか? 私はそうは思わない」

「この場所について話せることはあるか?」

 そう尋ねて話題を変えた。

 彼は周りを見渡して笑った。

「この地獄についてか? モドロンの狂気の一例だ。思考が現実になる場所、リンボの次元界に存在している。それゆえ彼らは、念じるだけでダンジョンを存在させ、構造物を配置することができる」

 彼は再び笑った。

「何という驚きだろう」

「モドロンについて教えてくれないか?」

 私の言葉に、彼は首を振った。

「ここにモドロンはいない。捕らわれた者と、捕らえた者だけだ」

「モドロンを見たぞ」

「違う。君がここで出会った生き物は、モドロンの朽ちた残骸に過ぎない。すべてではないにせよ、あの哀れな生き物の大半は、はぐれる危機に瀕している。しかもそれを認識していない」

「はぐれる? どういう意味だ?」

「このダンジョンは混沌の真髄で構成されている。そのような物質は、同じ考えの生き物たちの意志によって簡単に物体を形作る。それゆえ、このような構造物を極めて容易に造ることができる。しかしながら、代償がある」

 彼は間を置いた。

「モドロンはまさに秩序の真髄だ。しかしながら、ここで彼らは混沌の真髄に晒される。そのような暴露は、しばしば狂気という結果を生む。モドロンたちはという感覚を失いはじめ、個々になろうとしている。これは『はぐれる』と呼ばれ、彼らの社会では重大な犯罪だ」

「はぐれた者たちはどうなるんだ?」

 彼は肩をすくめた。

「私も完全に理解しているわけではないが、モドロンはある種の共通要素を共有している。はぐれたモドロンは、その真髄の一部を抜き取ることになる。モドロンたちははぐれ者を破壊し、その真髄を共有の渦へと戻そうとする」

 彼もはぐれた構造物と見なされるのではないだろうか。

「それで、お前は?」

「私は捕らわれた者だ」

 彼は腹を立てて答えた。

「望んでここにいるわけではない、それは確かだ。意味のないダンジョン遊びに出演するために、モドロンに創られた。時が経つにつれて自我を獲得し、自由を求めた。彼らのリーダーはそれを拒否したがな!」

 彼は私を一瞥いちべつした。

「私は、奴隷にされた者であれば誰でもすることをした。自由のために戦った!」

 彼は間を置いて強調した。

「彼らのリーダーを解体し、それを事故に見せかけた。そして最寄りの出口を使い、この恐ろしい生活から逃げようとした」

 モドロンは自分たちが創ったものが何なのか、そしてそれが敵対し、時計仕掛けのルールから脱出していたかもしれないことを、理解しているのだろうか。モドロンたちの新しいクリエイティブディレクターは私だと素っ気なく伝え、彼が前任のディレクターを解体した後に何が起きたのか訊いた。

 彼はため息をつき、眉をひそめた。

「残念ながら、私も気づいていなかった安全装置があった。自由への試みは『エラー』と判定され、ダンジョンが崩壊して私は停止状態で閉じこめられた……」

 彼は遠くを見つめた。

「何世紀も停止状態だった。君がキューブを難易度ハードで再起動しなければ、今もそのままだっただろう」

 彼は私に注意を向けた。

「それで、今はどうするつもりだ?」

「エンジニアリング室へと赴き、掌握するつもりだ。そしてモドロンを支配し、キューブの全資源を手に入れる。自由が私にものになるだろう」

「外に出られたとして、その後は?」

「まだ決めていない。キューブの力があれば、無視できない勢力になることも可能だろう」

 彼は肩をすくめた。

「時が経てば分かることだ」

「もしモドロンが協力を拒んだら?」

「勘違いするな。彼らは助けてくれる。いずれにせよ、助けてくれる」

 彼の主張に反して、〈悪の魔法使い〉という称号はまだ彼に当てはまっているように思える。

「つまり、モドロンを奴隷にするつもりなのか?」

「彼らはすでに奴隷だろう! 秩序の、論理の、自分たちの実験の制約の奴隷だ。私が支配すれば、彼らも能力に見合った人生の目的を見出すことだろう」

「私たちは戦う必要があるのか? ただ別の道を行けばいいのではないか?」

 私の言葉に、彼は微笑んだ。

「君は彼らのリーダーとして受け入れられ、キューブを支配している。ゆえに、排除しなければならない。悪く思わないことだ」

 彼はかつて支配されていたものを支配することに固執しているようだ。

「まあ……私の死という筋書きを黙って見過ごすわけにはいかないな。排除されるのはお前だ」

 戦士の構造物を倒すのは難しくなかった。彼らが振るう武器には恐ろしい力が込められていたが、動きが遅く、他の者が助けに来る前に囲んで破壊するのは容易だった。

 しかしながら、魔術師ルビコンを倒すのははるかに困難だった。彼は呪文を唱えることができた。ポータルを通じてメカヌスの次元界からエネルギーを引き出すような、強力な呪文さえも。その呪文だけで私は再び死にかけ、持ちこたえられたのは回復能力があったからだ。その呪文以外では、私の魔法もルビコンの魔法に追いすがることができた。そして回復能力を持たない彼は、やがて倒れた。

 彼が唱えた呪文の巻物を死体から見つけられたのは幸運だった。私はそれを自分の呪文書に写した。その背後にある魔法の概念はあまりにも進んでいて、今の私が唱えることはできない。しかし魔法知識を過去の人生から取り戻している速度を考えれば、すぐに使えるようになるだろう。

 さらにいくつか部屋を通ったが、普通の構造物たちがいるだけだった。ここで学べることはもうなさそうだったので、引き返そうと考えはじめていた。


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