この不可思議な売春宿の娼婦たちと話しに行くことにした。建物は円形で、その中を廊下が走っている。娼婦たちの部屋は外壁に面していて、廊下に開かれていた。中央にはベンチと植物が並び、心地よく交流できる場所になっている。
館を歩きはじめると、背の高い優雅な女性に行き合った。その鋭い容貌と堂々とした振る舞いは、貴族的な美の典型だろう。衣服は銀の糸で紡がれているようで、首飾りからは小さな薬瓶がぶら下がっている。私は彼女のエキゾチックかつエロティックな香りに引き寄せられたようだ。彼女は私に目を通して眉毛をつり上げ、私は軽蔑されたように感じた。
「こんにちは。私はヴィヴィアンよ。お呼ばれしたと考えていいのかしら?」
それは違うと保証し、彼女がまとっている香気について訊いた。彼女は一瞬顔をしかめ、そして私に微笑んだ。
「ええ、ええ、お褒めいただき感謝するわ……でもこの特別な芳香は、私個人の匂いとは関係ないのよ」
そして彼女は、自分の匂いが消えてしまったこと、実際は盗まれたことを説明した。私は彼女が匂いを捜す助けとなることに同意した。彼女は私に押しつけてしまったと感じたようだが、彼女のような素敵な女性のためであれば負担などではないと安心させた。
このことでアンナが怒って何やら口ごもっていた。私は「
廊下に面した部屋で、ジュリエットに会った。黒髪の若い女性で、けだるげに空中を見つめ、ときたま緑のベルベットのガウンの縫い目をつまんでいる。意気消沈しているのか、それとも単に退屈なのか、見分けるのが難しい。私は彼女に、求婚者がいないことで悩んでいるのかと尋ねた。
「すでに夫は居ります。そして私は、彼を深く愛してゐます。私の願ひは……」彼女は指であごを軽く叩いた。「……密通のやうなことです」
「彼との関係に問題が?」私はそう訊いた。
「さうです、問題があるのです……」彼女は腹を立てた。「……語る問題がないといふ問題が! 家族は私たちの恋愛を盛大に受け止めました。兄弟たちは互ひを愛し、友人たちは私たちの婚姻が
「私には分からないが……」
私は言いよどんだ。
「さうでせうか? あなたは、そのやうな恋愛を経験したことがないのですか?」
彼女は私を
「その肌の青白さからして、あなたの人生は多様な問題で満ちてゐるやうですが」
「自分の恋愛について、思い出せないんだ。出会った者たちの残滓が、何らかの問題があったことを示唆してはいるが」
「皆がそのやうな興味深い関係を持つてゐればよいだけなのです……騒動、確執のある家族、互ひの背中に刺される短剣、毒、狂つた兄弟と、巨大な剣を持つた怒れる父親。相手の家族は私を愛し、世界に愛されてゐます」
彼女は再びため息をついた。
「大きな苛立ちの源です。何か事態を刺激的にする方法でもあればよいのですが……」
モーテが浮遊してきてささやいた。
「お相手に同情しちゃうね。どんな厄介ごとを抱えこんだか知らないんだ。こんな小娘は、トラブル以外の何ものでもないよ」
「それは賢明とは思えないな、ジュリエット。自分が持っているものを享受するんだ」
私はそう提案した。
「ですが、波乱を経験したいのです。浮き沈みのある恋愛を経験したいのです……彼とではありえないことです」
彼女はため息をついた。
「ああ、愛とはこのやうなものなのでせうか。こん棒のやうに鈍く、野心ある
事態を刺激的にしてどうしたいのか訊いたが、はっきりした考えは持っていなかった。私は提案を思いついた。
「偽の浮気のラブレターを作ってみたらどうだ?」
ジュリエットの目が輝いた。
「ああ、素敵! 素晴らしい発想です!」
彼女は突然眉をひそめた。
「ですが、彼は私の筆跡を知つてゐます……あなたが書いてはくださいませんか?」
「私はそういったことは。しかし、適任者を探すことはできる」
「まあ、あなたが? ああ、素晴らしい! 用意ができたら、愛しのモンタギューに渡してくださいまし……〈市民催事場〉にゐるはずです。手紙は……スコッフロー・ペンを当たつてみるとよいでせう。下層区で活版屋を経営してゐます。ありがたうございます!」