すぐ近くの壁に門扉があった。扉を開くと、冷たい風が吹き抜けた。そしてささやき声が聞こえ、その意味を理解できないにもかかわらず、体に震えが走った。声はすぐに消え、静寂が戻った……かつてここに来たことがある。そして、仲間たちは私に付いてくるべきではないと、強く感じた。
扉の先は、横に長い部屋だった。入り口はその長辺にあり、唯一の出口は反対側の壁にある。床に散らばる白骨化して久しい死体だけをお供に、部屋をうろついた。壁の一つに文が刻まれていたので、読んでみた。
『ついにお前を捕らえることができた。お前が私を苦しめることは、もう二度とない。定命の者は、ここから逃れることができないからだ。鍵を探し、鍵と共に死を抱け。そうしてようやく、お前は自由となるだろう』
その意味に気づき、入り口の扉へと急いだ。扉はひとりでに閉まり、施錠された。振り向いた時に、別のものに気づいた。私の腕を飾っているのと同じ苦悩のシンボルが、床にはめこまれている。そのことをいぶかしみながら、唯一の出口に向かった。
中央に石棺が置かれた正方形の部屋に入った。その瞬間、別の場所にいた。この部屋にも石棺がある。しかし調べてみても、石棺の中には鍵しかなかった。この部屋の床にも、苦悩のシンボルが刻まれている。
確認できる出口は、同じ正方形の部屋に続くものだけだ。その部屋へ向かうと、突然転移した。たった今離れたはずの部屋にいる。さて、何をすべきだ? 考えながら歩き、苦悩のシンボルを踏んだ。雷に打たれた、ということしか分からなかった。
部屋の中で、死から目覚めた。最初に入った部屋だ。他にいい案が思いつかず、再び正方形の部屋へ向かった。そして再び転送された。今度は新しい部屋だ。しかし同じように、石棺と床の苦悩のシンボルと、正方形の部屋への通路がある。
最初の部屋のメッセージが今になって理解できた。これらの罠は、この墓にある情報を私以外の誰かが知ることを、防ぐためのものに違いない。さらに二回死に、ついに正方形の部屋にたどり着くことができた。
中央の石棺の周りには、石版に刻まれた文があった。石版に触れると、わずかに動いた。石版を押すごとに、石棺からカチリと音がする。私は石版の文に大いに興味をそそられた。明らかに、私へのメッセージだ。
『名前を恐れろ。名前には、同一性という力がある。他者は名前を武器として使うことができる。名前は次元界を越えてお前を追跡するための釣り針となる。名を持つな。そうすれば、安全だ』
『私は、名を持たぬ者だ』
名を持たぬ者。私にふさわしい名前だ。この碑文、これはすべて、過去の私によって書かれたものに違いない。私は次のパネルに移動した。
『彼らは言った——お前は分かたれたのだと。数多の男の一人だと。多くの名前をまとい、それぞれがお前の体に傷を残していると』
『失われし者……不滅者……転生の果て……幾千の死……生き続ける宿命の者……休みなき者……数多の独り……生が幽閉たる者……影の運び手……傷つきし者……悲劇をもたらす者……イェメス……』
『もう、うんざりだ』
次の石版の彫刻は雑なものだったが、他と同じ手によるものだろう。
『できることはない。記憶は消え、おそらく二度と戻ってこない。死ぬたびに、自分の一部を失っていく』
『どうして不死が、まだ死ぬことができるんだ?』
『死ぬたびに心が弱っているのだと言われた。それでどうなるのか訊いたが、答えはなかった。彼は役に立たなかった。無用な彼から、他の私が何かを得ることはないだろう。彼は殺しておいた』
他の石版によれば、私には敵がいたらしい。明らかに、私と同じくらい不滅の敵が。
『殺人者によって、何度も寿命を失った。奴を欺くことはできない。殺さなければならない。臭跡でまこうとした。奴をなだめるため、偽の死体を残した。距離を盾として使おうと、大半の外方次元界をさまよった。奴を殺すために、罠に満ちたこの墓を造った。そして身を隠した』
『だが、時間を稼ぐことしかできなかった。襲撃は必ず再開し、さらに激しさを増していく。偽装は役に立たない。どういうわけか、殺人者は私が生きていることを知っていた。そしてどの次元界に隠れようとも……やがて私を見つけるのだ』
次の石版の推測は、私がかつて考えたことを映し出していた。
『我々は、この生を最終的に
『何らかの因果の輪廻なのか? 知っての通り、過去の私は恐ろしい罪を犯したが、苦心して善行しか行わなかった私もいた。これは罰なのか? 分からない。この言葉が、私が提供できる唯一の真実だ。私には、分からない』
『いつになれば、“私”は“我々”から離れられるのだろうか? いつになれば、私は他の私の行動という束縛から自由になれるのだろうか? いつになれば、過去の人生の重さから解放され、“私”になれるのだろうか?』
続けて、次の石版は日記の重要性を説いていた。私が見つめているこの壁も、その日記の一つなのだ。
『次のお前が学べるように、旅を記すことは極めて重要だ。しかしさらに重要なのが、この謎を解明するために使う情報源を、保護する必要があることだ。重要人物や文書や神託者が死や破壊によって失われた場合、お前は自分が誰なのか、何なのか、どうしてそうしているのか、知ることができなくなる』
次の石版は、モーテが〈葬儀場〉で読んでくれた、私の背中の指示のようだ。
『お前はすでに、ステュクス河の水を散々飲んだような気分だろう。しかしお前は、
『日記をなくすな。さもなければ、我々はまたステュクス河に行き着くことになる。そして何があっても、お前が
『あの頭蓋骨は、信用するな』
この最後の一文を、モーテは読んでいなかった。私は部屋の最後のパネルを読んだ。
『残ったわずかな生さえも、体の穴から流れ出ていく。世界など燃えろ、次元界など燃えろ、私に人生をよこせ! この生は完膚なきまでに破壊してやる、粉砕してやる、打ち砕いてやる、血と糞尿に沈めてやる。お前が生きられないようにな! 死ぬことができないなら、すべての創造物を燃やし尽くしてやる!』
すべての石版を押すと、中央の石棺が開いた。しかし中には鍵しかなかった。鍵を手に取り、他の三つの石棺から集めた鍵と合わせると、再び別の部屋に移動した。その片隅でポータルが開いている。その先は、墓の外だった。
モーテと話すために、彼を手招きした。彼は浮遊しながら私のところに来た。
「何かお悩みかい、大将?」
背中の文章をもう一度読むように言った。彼は躊躇したが、今回はそのすべてを聞きたいのだと主張した。彼は〈葬儀場〉の時と同じように、最後まで読まなかった。
「続けろ。その後には、何と書いてある?」
「何言ってんだ、大将? 何もないよ」
「『あの頭蓋骨は、信用するな』とは?」
「あぁ……最後のちょびっとだろ? まあ、マユツバだと思ったし、声に出しては読まなかったんだよ」
「おお、そうか? それでどう思う? お前のことだと思うか?」
「そうは思わないね。だって、アンタはオレを信じられるだろ、大将?」
「私に嘘をついているな、モーテ?」
「いやいや! おい、どうしたんだ、大将? まだアンタを、よくないほうに導いたことなんてないだろ?」
「
モーテはまだ普段通りの、のんきな口調を続けている。
「なんにもないよ! ぜんぶ話してるさ……まあ、
「他に
「大将、本当に、なんにもないんだ。アンタに隠し事なんてしないよ」
この件について、彼に言わせることができたのはそれだけだった。嘘をついていることは確かだ。しかし、その理由が分からなかった。