プレーンスケープ トーメント 非公式小説

溺れた国

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 ハーグリムが示した出口は、入り組んだ地下の別の場所につながっていた。出発する前に、ソエゴの運命を確かめることにした。

 彼の部屋に行く途中に、新たに覚えた〈骨の言伝ストーリーズ・ボーンズ・テル〉の能力を女性のゾンビに試してみた。初めはまったく気づいていないようだったが、近づく私のほうを向き、あいさつするかのようにゆっくりとうなずいた。モーテが目ざとく割りこんできた。

「わお、大将……べっぴんさんじゃないか。こんな可愛らしい娘さんには、なかなかお目にかかれるもんじゃないよ」

「まあ、このが目に入らないならな……」

「そうそう、オレが探してるのはそういう……おい!」

 モーテが勢いよく私のほうを向いた。

「オレを皮肉ってるのか?」

 モーテをからかうことができたのは、これが初めてだった。ゾンビに質問してみると、彼女の言葉を簡単に理解できることが分かった。しかし彼女の心は体と同じようにゆっくりで、新しいことは学べなかった。

 ソエゴの部屋には彼の死体があった。死体はミイラになり、放置されている。少しだけ哀れに思いつつも、塵人ちりびとは彼の死体を欲するのではないかと考えた。たとえ彼が、彼らを捨てたとしても。死体を引きずっていくのは難しいが、あるいは頭部だけであれば。ほどなくそれを鞄につめて、出発する準備ができた。

 ハーグリムが話していた〈溺れた国〉と呼ばれるエリアに入った。この地をうろつくグールは、〈死者の国〉のための斥候の役割を果たしている。

 このエリアにはグールに加えて、ヴァルグイユと、巨大な白いリザードであるトロコポトカがはびこっていた。ヴァルグイユの群れを退け、くるぶしまで水につかりながらたどり着いた区画で、栓がゆるんだ小瓶が落ちているのを見つけた。中の水を出すためにひっくり返すと、水が流れ、流れ、いつまでも止まらない。石の顔のグリヴが話していた、魔法の水の小瓶に違いない。

 さらに二体のトロコポトカを殺した後に、ファロドの収集家の死体に出くわした。彼はたぐいまれなる技量を持っていたに違いない。ここまでたどり着いただけではなく、青銅球を見つけていたのだ! それを死体から取り上げ、調べてみた。直径1フィート約30.5センチほどの単純な青銅の球体だが、中が空っぽであるかのように、驚くほど軽い。見た目は普通にもかかわらず、どういうわけか五感に不快感を与えてくる。球体の手触り、その“感触”だけで、今にも爆ぜそうな卵のような印象を受ける—触れるだけで、鳥肌が立つほどだ。さらに酷いことに、球体からは腐ったカスタードのような臭いが発せられていて、目に涙がにじむ。


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