プレーンスケープ トーメント 非公式小説

ゼルシモンの不壊の輪、PART 1

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 その夜、寝る前にダッコンが小さな丸い石を調べていた。驚いたことに、それはかなりの数の輪によって構成され、それぞれが巧みにつながり、コンパクトな形に折りたたむことができるものだった。私にとっての呪文書のように、ギスゼライの魔法を記憶するためのものだろうか。私は彼に、その魔法を教えてくれないかと尋ねた。

 彼は答えた。「儂らの種族のことわりを識ることは、お主が識った秘技とは異なる。力を与えるのはエネルギーではない。識ることだ。ゼルシモンの教えでは、そう言われておる」

「ゼルシモンのことわりを教えてくれないか、ダッコン?」

「自分が何を尋ねたのか、識っておるのか?」

 ダッコンの刃の質感が変化し、石になった。

「ゼルシモンの道を歩むには、儂らの種族を識らねばならぬ。儂らの種族ではない者が、かようなことを識るのは困難だ。儂らの種族ではない者が、ゼルシモンのことわりを聞くことはある。しかし、ことわりを識ることはない」

 私はこの仲間と、そのゼルシモンという人物に興味をひかれた。ぜひ彼の哲学を学び、それによってダッコンのことも知りたいと思った。

「ダッコン、お前の種族のことを、ゼルシモンの教えを、識りたいんだ。そこには学ぶべき知恵があると信じている」

「お主の言葉を聞き届けたと識れ。そして試そう。学ぶには、儂らの種族を識らねばならぬ。儂らの種族を識るには、ゼルシモンの不壊ふえの輪を識らねばならぬ」

 ダッコンは石の円盤を手に取り、蜘蛛のような指を側面に引っかけた。するとカチリと音がして、輪のプレートが新たな形に変わった。彼は逆の動作で石を封じた。

「ゼルシモンの壱の輪のしきは、お主に開かれておる。学べ。そしてお主の言葉を聞こう」

 ダッコンからゼルシモンの不壊ふえの輪を受け取った。ダッコンの動きを真似るとプレートが退き、新たな形に変わった。その輪には一連の記号が書かれている。それは見たことのある文字ではなかった。幾何学が組み合わさり、円が多く見られる。私は見ているだけでその記号を識り、読むことができると識った。持っているが思い出せない知識を、再び使ったのだ。そして、最初の輪を読みはじめた。

『我らが最初の種族であると識れ』

『かつてはすべてが混沌であった。最初の種族は混沌から生じたと考えられている。最初の種族が自らを識ったとき、彼らはもはや混沌ではなく、肉体となった』

『我らの種族は、その思考と物質のしきをもって最初の世界を創り、自らを維持するしきをもって生きた』

『我らの種族にとって肉体は新しく、それゆえ我らの種族は自らを識ることができなくなった。肉体は新たな思考を生んだ。欲望と嫌悪、痛みと喜び、妬みと疑い。そのすべてが各々を育て、我らの種族の精神は分かたれた。その分裂において、我らの種族は罰せられたのだ』

『肉体の感情は強固であった。欲望と嫌悪、痛みと喜び、妬みと疑い、それらすべてが、敵にとっての導き石となった。最初の種族は肉体となることで、肉体をその意志の道具としてしか識らぬ者の奴隷となった。その獣が、〈イリシッド〉であると識れ』

『〈イリシッド〉は自らを識らなくなった種族である。他種族に、自らを識らなくさせる方法を学んだ種族である』

『彼らは触手なる者である。肉体の中に生き、肉体を意志の道具と見なす。彼らの血は水の如く、その思考をもって精神を変ずる。〈イリシッド〉が我らの種族のもとに来たり、我らの種族はもはや種族ではなくなった。我らの種族は、奴隷となったのだ』

『〈イリシッド〉は我らの種族を最初の世界から奪い、偽りの世界へと連れ去った。偽りの世界で苦しむ我らの種族に対し、〈イリシッド〉は肉体のことわりを教えた。それにより、我らの種族は喪失を識った。苦痛を識った。死を識り、体と心を識った。他者の家畜たることを識り、自らの肉体を費やすことを識った。そして、かようなことに喜びを感じさせられる恐怖を識った』

不壊ふえの輪は、我らの種族が自らを失った経緯を示すしきである。そして我らの種族が、再び自らを識ることとなった経緯を示すしきである』

 私はダッコンに、読んだことを伝えた。彼は私に、何を識ったのかを問うた。彼が指しているのは、イリシッドが彼の種族を奴隷化した方法という表面的な物語ではなく、その背後にあるものだ。

「強さは自らを知ることにある。かつて自らを識らなかった者が失われたことを学んだ。彼らは他者の道具になってしまった」

「お主はゼルシモンの壱の輪を識った。ゼルシモンの言葉を見ただけではなく、識ったのだ」

 ダッコンは輪を持ち、ふちの周囲に指を引っかけた。するとカチリと音がして、輪のプレートが新たな形に変わった。彼は逆の動作で石を封じた。

「ゼルシモンの弐の輪のしきは、お主に開かれておる。学べ。そしてお主の言葉を聞こう」

 私は二番目の輪を読んだ。

『肉体は鋼に跡をつけぬことを識れ。鋼は肉体に跡をつけ得ることを識れ。これを識り、ゼルシモンは自由となったのだ』

『触手なる者は肉体の存在であることを識れ。彼らは肉体に依存し、肉体を意志の道具として使う。肉体が彼らの意志に仕えた場所の一つが、〈イリシッド〉の偽りの世界の、抜け殻の畑である』

『抜け殻の畑は、〈イリシッド〉が脳を使い尽くした後の、我らの種族の体を捨てる場所である。脳がむさぼり尽くされたとき、抜け殻は〈イリシッド〉の毒茎草の肥料となる。ゼルシモンは自らを識らず、自らが何になったのかも識らず、抜け殻の畑で働いた。彼は肉体の道具であり、肉体は満ち足りていたのだ』

『ゼルシモンが鋼の聖典を識ることとなったのは、この畑である。輪転りんてんの一つにて、ゼルシモンが畑を手で耕していた時、彼は脳を残した抜け殻に出会った。食物として利用されてはいなかった。それでもそれは、死んでいた』

『〈イリシッド〉の食物として仕えずに死んだ抜け殻という思考は、ゼルシモンには理解しがたかった。その思考が、その抜け殻に何が起きたのかを識りたいという欲求を生んだ』

『抜け殻の頭蓋骨には、鋼の刃が埋まっていた。鋼の刃が、骨に穴を開けていたのだ。ゼルシモンは、それが抜け殻を殺したものだと気づいた。鋼は肉体に跡をつける。しかし、肉体が鋼に跡をつけることはない』

『ゼルシモンは刃を手に取り、表面を調べた。そこに彼は、反射した自らを見た。ゼルシモンが初めて自らを識ったのは、その鋼の反射においてであった。その刃は鋭く、その意志は担い手のものである。ゼルシモンが〈二つの空の宣告〉を発した時、ギスに向けられたのはその刃であった』

『ゼルシモンは多くの輪転りんてんにおいて、この刃を携えていた。そして刃について、多くのことを考えた。彼は刃を畑の仕事の助けとした。刃を使うことで、刃が使われなかった理由を考えた』

『〈イリシッド〉は強力であった。彼らが識らぬものはないと、ゼルシモンは信じていた。しかし〈イリシッド〉は、鋼の道具を帯びてはいなかった。彼らが道具として使うのは、肉体のみである。すべては肉体によって行われていた。触手なる者は肉体でできており、肉体を識っていたからである。しかし鋼は肉体にまさる。刃が肉体を殺した時、鋼より弱きは肉体であった』

『そしてゼルシモンは、肉体が鋼に屈したことを識ることとなった。それを識ることで、鋼は〈イリシッド〉より強いことを識った』

『鋼は我らの種族の聖典となった。鋼は我らの種族が自由を知るために用いた聖典であることを識れ』

 ダッコンは再び、私が学んだことを問うた。

「何かを識ることは、肉体や鋼のように、道具となり得ることを学んだ。そして何かに出会ったときは、その本質と、それが何になるのか識ろうと試みることを学んだ」

「お主は彼の言葉を見た。そしてその先を見た。お主はゼルシモンの弐の輪を識ることとなった」

 彼は輪を手に取り、手際よくひねってプレートをスライドさせた—しかし奇妙なことに、石は変わっていないように見えた。

「この教えを黙想し、それを識ることがお主の力となろう。それを吸収したとき、お主はさらなることを識るだろう」

 彼が渡してくれたのは、私の呪文書に写すことができる、ギスゼライの巻物に相当するものだった。彼はさらにゼルシモンの参の輪を開いてくれた。私は疲れを忘れ、腰を落ち着けて学んだ。

『ゼルシモンは偽りの世界の天空の洞窟で、〈イリシッド〉のアルラシィ・トゥワイス゠ディジーズトとその仲間のために、多くの輪転りんてんを尽力した。その務めは、幾人もの背を折ったであろう。しかし彼は働き続け、苦悩と疲労に苦しみ続けた』

『しかるほどに、〈イリシッド〉のアルラシィ・トゥワイス゠ディジーズトが、その葉脈状の回廊にゼルシモンを呼び寄せた。彼はゼルシモンが仲間に対し、多少の執着と臆病さを見せたと主張した。その主張に真実の重みはなかったが、アルラシィは、ゼルシモンの心の中に炎が荒れ狂っているのかを識りたいだけであった。彼はゼルシモンの心が奴隷のものなのか、反逆者のものなのか、識ろうとしたのだ』

『ゼルシモンは新たな力を明らかにすることなく、〈イリシッド〉の処罰に従った。彼は心の中の憎悪を見せても何にもならず、彼のように感じる他者を傷つけることになると識っていた。彼は処罰に耐えることを選び、沈黙の列柱にて輪転りんてんを忍ぶこととなった』

『列柱の上で鞭打たれ、ゼルシモンはその体を残し、痛みの届かないところへと心を動かした。彼は輪転りんてんを生き残り、アルラシィ・トゥワイス゠ディジーズトに連れ戻され、風習通りに〈イリシッド〉に処罰を感謝した。そうすることで、彼は心が自由のまま、〈イリシッド〉に自らが奴隷だと証明したのだ』

『憎悪の炎を保ち、抑え、アルラシィ・トゥワイス゠ディジーズトに弱者だと思わせた。蜂起の時、アルラシィはゼルシモンの手によって死を識り、三度目の死を経験した最初の〈イリシッド〉となった』

 私は三番目の輪のメッセージをしばらく考え、その本質は、以前聞いたダッコンの言葉に要約されることに気づいた。私は彼に、三番目の輪を識ったと伝えた。

「忍耐だ。忍耐により、強くなる」

 その言葉は奇妙にも、ダッコンに衝撃を与えたようだ……私がその言葉を口にした時、彼の額にしわが寄り、その後普段の消極的な面持ちに戻った。彼は輪を解除し、新たなギスゼライの“呪文”を教えてくれた。さらに学べることはあるだろうか。

「よし……他に教えられることは?」

 そう言った時、ダッコンが私を見ていないことに気づいた。彼は不壊ふえの輪を手に持ち、調べていた。彼の剣は、不壊ふえの輪と同じ質感になっている……そして不意に、彼が老いて見えた。

「ダッコン?」心配になった私は尋ねた。

 彼は黒い瞳を輪から上げ、私を見た。

「お主が輪の教えを識ることになるとは、信じていなかったと識れ。ゼルシモンのことわりを学ぶために歩むは……険しい道となろう。お主の心は、未だ集中しておるか?」

 私が保証すると、彼は四番目の輪を開いてくれた。それは彼らの種族の裏切り者に関するもののようだ。しかし時間も遅く、この裏切り者の物語がギスゼライに何を伝えているのか分からなかった。この勉学は、後日再開することにした。


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