バーテンからもらったリストはそれで尽きたが、何かに引き寄せられて別のテーブルに近づいた。年老いた男がいる。その乾いた黄色い皮膚は、そこかしこを旅して
男が私のほうを向いた。その瞳は磨かれた石炭のようだ。そしてしばらく私を見据えていたため、私は彼が盲目なのではないかと思った。突然、彼の武器が生気を失い、その瞳を映し出すかのような、つやのない黒色へと変わった。
「大丈夫か?」私は尋ねた。
彼は何も言わずにしばらく私の顔を探り、そして答えた。
「ご機嫌よう……旅人よ」
彼の声は、巨大な木の枝を風が揺らすかのように、穏やかで陰鬱だった。彼は私と目を合わせ、視線をもぐり込ませてくる。武器の黒色が消え、話しかける前の輝きを取り戻した。
「お主の瞳には、ここに至るまで、はるか遠く旅した者の重みがある」
男の視線は揺るがない。
「儂はダッコンとして識られておる」
彼は「識られて」という言葉を強調した。それは不自然に感じられたが……同時になじみ深かった。
「お主は……儂には識られておらぬ」
「自分のことが分からないんだ」私は正直に答えた。
「それは重畳。お主自身について識ることで、この次元界において識るべきものが減ずるだろう」
彼はまだその漆黒の瞳で私を探りながら、しばらく口を閉じた。
「お主がこの都市に来た理由を、識りたいのだが」
「答えを探している……質問がいろいろあるんだ」
「聞こう。問うのだ」
「お前の顔立ちは……なじみがない。何者だ?」
「ギスゼライだ」
彼はそれ以上言わず、私はオウム返しに質問した。
「ギスゼライ?」
「ギスゼライとは、儂らの種族の片割れだ」
再び彼を促さなければならなかった。
「種族の片割れ、とは?」
「ギスゼライだ」
彼は見た目に違わず真面目一辺倒なのかと考えながら、質問した。
「ああ、だがギスゼライとは一体何なんだ?」
ダッコンはしばらく黙り、そして答えた。
「儂らの歴史を、お主に識らせる必要はない。その歴史をわずかにもそらんじる前に、儂らは時の刃によって失血死してしまうだろう」
「お前たちの歴史を知る必要はない……今のお前たちを知りたいんだが」
「これを識り、それを答えとせよ。儂らは、移りゆくリンボの次元界を故郷とする種族だ」
彼は器用な動きで背中から剣を抜き、正面に構えた。
「そこで儂らは、精神によりリンボの物質を形成する。思考により、都市を構築しておるのだ」
刃から金属のさざ波が広がり始めた。波の山と谷が、ダッコンの声の抑揚と一致している。
「儂らはその混沌の中に住み、識ることのみが儂らを保つ。それがギスゼライだ」
「その刃は何だ……お前の声に反応して動いているぞ」
「これはカラチの刀。担い手の階位を識らせるものだ」
「どんな階位を意味しているんだ?」
「この刃は〈ゼルス〉が携える象徴だ。〈ゼルス〉とは、ゼルシモンの言葉を識る者。ゼルシモンの言葉を識ることで、自らを識る者だ」
「ゼルシモン?」私は再び彼を促した。
「ゼルシモンは、儂らの種族を創建した者だ。彼はギスゼライが自らを識る前に、ギスゼライのことを識った。彼が種族を定義した。彼が儂らに、一つの心を与えたのだ」
「お前は『識る』を特に強調しているようだ。それにはどういう意味が?」
「すべてだ。構造体であれ、肉体であれ——その存在は、自らを識ることで定義される」
「では、もし人が自分自身について識らなければ?」
「自らを識らぬ心は、ひび割れておる。心がひび割れておれば、その人物はひび割れておる。その人物がひび割れておれば、その者が触れたものはひび割れる」
ダッコンはそこで間を置いた。
「ひび割れた者が見たものは、その手は、破壊を生むのだと言われておる」
「お前は自分のことを識っているのか?」
ダッコンは沈黙した。その漆黒の瞳が、話しかけたばかりの時と同じように、遠くを見つめた。私はこの質問が重要だと感じ、彼を促した。
「もう一度訊くぞ。お前は自分のことを識っているのか?」
再び喋ったダッコンの声は、巨大な石が割れ目に落ちたかのように響いた。言葉を胸から絞り出しているかのようだ。
「お主がそれを識ることは、儂の意志ではない」
彼の返答が、もしくは返答を拒んだことが、十分に物語っている。
「聞き方が優しすぎたようだな。話せ」
答えがゆっくりと、一言ずつ紡ぎ出される。
「儂は……自らを識ることが、できなくなったのだ」
ダッコンの声が、ささやきに変わる。
「なぜかは識らぬ。そうなったということは識っておる。だが、どうやってかも、何時そうなったかも識らぬ……どうすれば再び自らを識ることができるのか、さえも」
その言葉からは悲哀が感じられた。しかし、彼がそれを指摘されたくないことは明らかだ。そのことは胸の内にしまい、差し障りのない方向に話題を変えた。
「この都市について、教えてくれないか?」
「〈シギル〉という名前で識られておる。儂らの種族のあいだでは、自らを識らぬ都市として識られておる」
「自らを知らない? どういう意味だ?」
「都市は存在しておる。されど自らを識らぬ。自らを識らずして、その存在はひび割れておる」
「都市は自らに対して、対立して存在しておる。自らを次元界から隔絶し、されどあらゆる場所を望んでおる。その壁は扉であり、されどその扉を閉じておる。かような存在自体が、自らを識らぬことを物語っておる。自らを識らずして、その存在はひび割れておる」
私は彼の言葉を考え、少し前までは考えられなかった柔軟な精神で、反論をまとめた。
「もし都市がひび割れて
「お主の問いに、問おう。もし都市がひび割れており、お主が周囲の矛盾を理解できるならば、どうするのだ?」
「お前の問いに、問おう。お前はこの都市の存在がひび割れていると主張している。より大きな存在の可能性を探究することなく、それを受け入れている。それはお前がひび割れていることを……そして便利な答えのためだけに知識を求めていることを、示唆しているだろう」
ダッコンは沈黙した。
「儂らの問いの答えを識ることはできぬ。されど都市は存在しておる。それがすべてだ」
まだこの話題を終わらせるつもりはなかった。
「それでも私は、私たちが問いかけた質問と、問わなかった質問によって、自らを識るのだと主張しよう。もし私たちが問うことをやめ、見て取れることだけを受け入れるようになれば……」
「儂らは自らを識ることをやめてしまうだろうな」
ダッコンの声が少し変化し、重々しくなった。
「かような言葉が、かつて交わされた。儂はそれを聞き、識ったのだ」
「どこで聞いたんだ?」
「儂の言葉だ。かつて、儂はそれを識り、その意味を識っていた。お主が話すまで、忘れていたのだ」
ダッコンの視線が私を通り抜け、刃は輝きを止め、すべての色が失われて透明になった。沈黙の時が流れ、そして彼は、私を見上げた。
「お主と共に、お主の道を行きたいのだが」
この日さらに再び
私が同意すると、彼は言った。
「お主の道は、儂の道だ」
奇妙なことに、彼の声ははるか遠くから話しているかのように響いた。
今日はもう十分だと判断し、先ほど通り過ぎていた小さな宿に向かった。その道中、ダッコンが少し遅れたときに、モーテが急いで近づいてきて低い声で話した。
「あ~……あのギスは信じられないよ。置き去りにしようぜ」
私は彼の言葉に驚いた。モーテはダッコンについて、何を知っているのだろうか? 彼の言葉を無視し、歩を進めた。