プレーンスケープ トーメント 非公式小説

ダッコン、PART 1

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 バーテンからもらったリストはそれで尽きたが、何かに引き寄せられて別のテーブルに近づいた。年老いた男がいる。その乾いた黄色い皮膚は、そこかしこを旅して一所ひとところで長く休んだことがないかのように、無数の傷で覆われている。やつれた顔は非ヒューマン的に角張っていて、耳は頭の外へと伸び、先端が細くなっている。ゆったりとしたオレンジ色の短衣チュニックを身にまとい、奇妙な輝く剣が背中に吊されている。それは二叉のグレイヴのようで、金属の表面が、池に落ちた油の膜のように渦巻いている。

 男が私のほうを向いた。その瞳は磨かれた石炭のようだ。そしてしばらく私を見据えていたため、私は彼が盲目なのではないかと思った。突然、彼の武器が生気を失い、その瞳を映し出すかのような、つやのない黒色へと変わった。

「大丈夫か?」私は尋ねた。

 彼は何も言わずにしばらく私の顔を探り、そして答えた。

「ご機嫌よう……旅人よ」

 彼の声は、巨大な木の枝を風が揺らすかのように、穏やかで陰鬱だった。彼は私と目を合わせ、視線をもぐり込ませてくる。武器の黒色が消え、話しかける前の輝きを取り戻した。

「お主の瞳には、ここに至るまで、はるか遠く旅した者の重みがある」

 男の視線は揺るがない。

「儂はダッコンとして識られておる」

 彼は「識られて」という言葉を強調した。それは不自然に感じられたが……同時になじみ深かった。

「お主は……儂には識られておらぬ」

「自分のことが分からないんだ」私は正直に答えた。

「それは重畳。お主自身について識ることで、この次元界において識るべきものが減ずるだろう」

 彼はまだその漆黒の瞳で私を探りながら、しばらく口を閉じた。

「お主がこの都市に来た理由を、識りたいのだが」

「答えを探している……質問がいろいろあるんだ」

「聞こう。問うのだ」

「お前の顔立ちは……なじみがない。何者だ?」

「ギスゼライだ」

 彼はそれ以上言わず、私はオウム返しに質問した。

「ギスゼライ?」

「ギスゼライとは、儂らの種族の片割れだ」

 再び彼を促さなければならなかった。

「種族の片割れ、とは?」

「ギスゼライだ」

 彼は見た目に違わず真面目一辺倒なのかと考えながら、質問した。

「ああ、だがギスゼライとは一体何なんだ?」

 ダッコンはしばらく黙り、そして答えた。

「儂らの歴史を、お主に識らせる必要はない。その歴史をわずかにもそらんじる前に、儂らは時の刃によって失血死してしまうだろう」

「お前たちの歴史を知る必要はない……今のお前たちを知りたいんだが」

「これを識り、それを答えとせよ。儂らは、移りゆくリンボの次元界を故郷とする種族だ」

 彼は器用な動きで背中から剣を抜き、正面に構えた。

「そこで儂らは、精神によりリンボの物質を形成する。思考により、都市を構築しておるのだ」

 刃から金属のさざ波が広がり始めた。波の山と谷が、ダッコンの声の抑揚と一致している。

「儂らはその混沌の中に住み、識ることのみが儂らを保つ。それがギスゼライだ」

「その刃は何だ……お前の声に反応して動いているぞ」

「これはカラチの刀。担い手の階位を識らせるものだ」

「どんな階位を意味しているんだ?」

「この刃は〈ゼルス〉が携える象徴だ。〈ゼルス〉とは、ゼルシモンの言葉を識る者。ゼルシモンの言葉を識ることで、自らを識る者だ」

「ゼルシモン?」私は再び彼を促した。

「ゼルシモンは、儂らの種族を創建した者だ。彼はギスゼライが自らを識る前に、ギスゼライのことを識った。彼が種族を定義した。彼が儂らに、一つの心を与えたのだ」

「お前は『識る』を特に強調しているようだ。それにはどういう意味が?」

「すべてだ。構造体であれ、肉体であれ—その存在は、自らを識ることで定義される」

「では、もし人が自分自身について識らなければ?」

「自らを識らぬ心は、ひび割れておる。心がひび割れておれば、その人物はひび割れておる。その人物がひび割れておれば、その者が触れたものはひび割れる」

 ダッコンはそこで間を置いた。

「ひび割れた者が見たものは、その手は、破壊を生むのだと言われておる」

「お前は自分のことを識っているのか?」

 ダッコンは沈黙した。その漆黒の瞳が、話しかけたばかりの時と同じように、遠くを見つめた。私はこの質問が重要だと感じ、彼を促した。

「もう一度訊くぞ。お前は自分のことを識っているのか?」

 再び喋ったダッコンの声は、巨大な石が割れ目に落ちたかのように響いた。言葉を胸から絞り出しているかのようだ。

「お主がそれを識ることは、儂の意志ではない」

 彼の返答が、もしくは返答を拒んだことが、十分に物語っている。

「聞き方が優しすぎたようだな。話せ」

 答えがゆっくりと、一言ずつ紡ぎ出される。

「儂は……自らを識ることが、できなくなったのだ」

 ダッコンの声が、ささやきに変わる。

「なぜかは識らぬ。そうなったということは識っておる。だが、どうやってかも、何時そうなったかも識らぬ……どうすれば再び自らを識ることができるのか、さえも」

 その言葉からは悲哀が感じられた。しかし、彼がそれを指摘されたくないことは明らかだ。そのことは胸の内にしまい、差し障りのない方向に話題を変えた。

「この都市について、教えてくれないか?」

「〈シギル〉という名前で識られておる。儂らの種族のあいだでは、自らを識らぬ都市として識られておる」

「自らを知らない? どういう意味だ?」

「都市は存在しておる。されど自らを識らぬ。自らを識らずして、その存在はひび割れておる」

「都市は自らに対して、対立して存在しておる。自らを次元界から隔絶し、されどあらゆる場所を望んでおる。その壁は扉であり、されどその扉を閉じておる。かような存在自体が、自らを識らぬことを物語っておる。自らを識らずして、その存在はひび割れておる」

 私は彼の言葉を考え、少し前までは考えられなかった柔軟な精神で、反論をまとめた。

「もし都市がひび割れて、どうなる? 物事が整然としている必要など、自らを知る意図を持つ必要など、ないだろう。もしその矛盾が、お前が理解できないほど強固なものであったらどうする?」

「お主の問いに、問おう。もし都市がひび割れており、お主が周囲の矛盾を理解できるならば、どうするのだ?」

「お前の問いに、問おう。お前はこの都市の存在がひび割れていると主張している。より大きな存在の可能性を探究することなく、それを受け入れている。それはお前がひび割れていることを……そして便利な答えのためだけに知識を求めていることを、示唆しているだろう」

 ダッコンは沈黙した。

「儂らの問いの答えを識ることはできぬ。されど都市は存在しておる。それがすべてだ」

 まだこの話題を終わらせるつもりはなかった。

「それでも私は、私たちが問いかけた質問と、問わなかった質問によって、自らを識るのだと主張しよう。もし私たちが問うことをやめ、見て取れることだけを受け入れるようになれば……」

「儂らは自らを識ることをやめてしまうだろうな」

 ダッコンの声が少し変化し、重々しくなった。

「かような言葉が、かつて交わされた。儂はそれを聞き、識ったのだ」

「どこで聞いたんだ?」

「儂の言葉だ。かつて、儂はそれを識り、その意味を識っていた。お主が話すまで、忘れていたのだ」

 ダッコンの視線が私を通り抜け、刃は輝きを止め、すべての色が失われて透明になった。沈黙の時が流れ、そして彼は、私を見上げた。

「お主と共に、お主の道を行きたいのだが」

 この日さらに再び唖然あぜんとした私は、腰をかけた。そしてダッコンを見て、彼を拒むことはできないと悟った。どういうわけか、彼とのつながりを感じたのだ。

 私が同意すると、彼は言った。

「お主の道は、儂の道だ」

 奇妙なことに、彼の声ははるか遠くから話しているかのように響いた。

 今日はもう十分だと判断し、先ほど通り過ぎていた小さな宿に向かった。その道中、ダッコンが少し遅れたときに、モーテが急いで近づいてきて低い声で話した。

「あ~……あのギスは信じられないよ。置き去りにしようぜ」

 私は彼の言葉に驚いた。モーテはダッコンについて、何を知っているのだろうか? 彼の言葉を無視し、歩を進めた。


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